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6

それから半年ほど経ったある日のこと、バイトから帰り扉を開けると玄関先に一人の大男が三つ指をついていた。


「お帰りなさいませ」


思わず無言で、先ほど開けた玄関をばたんと閉める。

「あっ、ま、待って――――ぎゃっ!」

閉めた扉の向こうから、あの日と同じように焦った声とばたん、どたっ!という音が聞こえた。
そっと扉を開けると、大男が倒れたまま顔を両手で押さえてひいひいと泣いている。


「…なにしてんの」


俺はため息をついて倒れている大男を引き起こし、汚れを払ってやった。

「あ、ありがとうございます、ありがとうございます」


ぺこぺこと頭を下げ、何度も何度も礼を言う大男を見て、じんと胸が痛くなる。


「なにしにきたの、ゴウキ」


あの日、何も言わず言葉通り姿を消し今まで現れることのなかった鬼が、また俺の目の前に現れた。嬉しい反面、悔しい気持ちも溢れてきて、思わず冷めた口調になる。
ゴウキは途端に体をびくりと竦ませおどおどと目をさまよわせた。

「…こいよ。」

ため息をついて中へと促すと、大人しくついてくる。ソファに腰掛けるように指示し、俺も向かいに座った。

「あ、あのですね…、こ、これを…」

おずおずとゴウキが、俺に何やら箱を差し出す。

『銘菓 鬼の角』

どうやら鬼の世界の土産物らしい。

「なにこれ」
「あの、あの…実はですね、私、帰ってから異例の大昇級を果たしましてですね」

あの日、鬼の世界に戻ると上司が身たことのない程満面の笑顔で出迎えてくれたらしい。
なんとゴウキは一晩で、三階級昇進するほどのエネルギーポイントを集めることができたのだそうだ。

「そんでわざわざ礼をするために来たっての?犯してくれてありがとうございますって?」

わざと意地悪な物言いをするとゴウキは真っ赤になって下を向いた。

「わかった。ありがたくもらっとく。用が済んだら帰れよ、もう用はないだろ?」

菓子を受け取り、冷たく言うとゴウキが悲しそうに眉をよせる。なんだよ。消えたのはそっちだろう。二度と来ないって言っただろう。早く消えてくれよ。
一向に動く気配のないゴウキの横に移動して、耳元に口を寄せてやる。

「それとも、またひどく犯されたいのか?」

わざと怖がらせようと低い声で囁く。俺はもうこいつを抱く気はない。
だってもう一度抱いてしまったら、俺はこいつを離せなくなる。

また目の前からゴウキがいなくなるくらいなら、触れずに済んでいる今のうちに消えてほしい。そして言葉通り、二度と目の前に現れないでほしい。
次に抱いてまた消えられてしまったなら、俺は二度と立ち直ることができない。

「…あの、ですね…、じ、実は、私、私…」

ゴウキは真っ赤になって口ごもっていたかと思うと、大きく深呼吸をしてからぐっと俺を強い目で真っ直ぐに捕らえた。


「――――私、雄志さんに、お嫁にもらってもらおうと思って来たんです!!」


言い切った!とばかりにはーはーと荒く息を吐き真っ赤な顔で汗を流すゴウキをぽかんとして見つめてしまった。


「…は?」
「あ、あの、あの、上司にですね、実はどうやってメーターがあんなに上がったかバレてまして。と言うのも、負のエネルギーの質でわかるらしいんです。そ、それでですね、上司が言うには、あ、あの、ゆゆゆ雄志さんが私に行った行為は、ぷぷぷぷろぽーずだと!

そそぎ込まれた良質な負のエネルギーは、こちらでいう所の結納金だと…」


ゴウキの説明に、開いた口が塞がらない。じゃああれか。鬼の世界では俺はゴウキに全力で嫁にこいと言ったことになるのか。

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