×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




8 涼介side

皆いなくなったあと、一人黙々と片付けをしている翔に後ろから近づく。

「翔〜、今日はありがとね〜。俺すっごい嬉しかったあ」
「そうか、よかったな」

片づけをする翔に抱きついたけど、帰ってきた言葉はひどく淡々としていて。振り向かない翔にいつもと違う何かを感じて肩からそっと覗き込んだ。

「ね、翔。ごめんね?怒ってる?」
「別に怒ってない」

本当に、普通に。いつもと様子が違うと少し不思議に思い、体を反転させて正面に向けた。

「うそ。じゃあどうして俺を見てくれないの?ね、翔。誕生日、お祝いしてくれるんだよね?」

にこりと笑う俺に対して、翔は無表情のままだった。

「…お祝いならしただろう。皆がお前を祝ってくれたじゃないか。それ以上何を求めるんだ?」
「翔?何言ってんの、皆は皆だよ。翔は違うでしょ?俺の恋人だもんね?」
「…こいびと?」

はは、と翔が自嘲気味に笑う。
どうしたの、翔。いつもと違うよ。

「…お前にとっての恋人ってのはあれか。浮気相手にごちそうを振舞ってお前の都合のいいように利用できる人間のことを言うのか」
「なに言ってんの?」
「もう、いい。今度こそ本気で冷めた。…終わりにしよう、涼介」


翔の言葉に、一瞬息が止まる。何言ってんの。冷めたってなに。終わりって?

「…な、に、言ってんの…?終わりって、なに…?嘘だよね?ね、翔、ごめん。今日の事怒ってんだったら謝るからさ。ほんと、皆に翔を自慢したかっただけなんだよ。俺の愛してる人はすごいだろって…。ね、翔。愛してるから、許して。ほんとに愛して…」
「俺はもう愛してない」

俺の言葉を遮り、きっぱりと告げる翔に顔が真っ青になった。

愛してない?
翔が、俺を愛してない?

「う、そ…。うそ、嘘だよね、翔。ね、いつもみたいに怒ってよ。そんで、俺も愛してるって言ってよ。ねえ、翔、ねえ…!」

今までとは違う翔に、必死になって何度も翔の名を呼ぶ。
でも、どれだけ呼んでも翔の顔はどこまでも無表情のままで。俺の心臓は破裂するんじゃないかってほど鼓動が早くなって、手足が急速に冷たくなるのを感じた。

「本気だ。ごめんな、涼介。俺はもう無理だ。お前の事好きだったから、何でもしてやりたかった。ずっと側にいたかった。でも、もういい。もういいんだ。今までありがとう。楽しかった。…お別れだ」

泣くでもなく、怒るでもなく。淡々と別れを告げる翔。
俺は掴んでいた肩を思い切り押して翔を床に押し倒した。

「つっ…!」

痛みに顔をゆがませた翔に、覆いかぶさる。

「だめだ、だめだだめだ!許さない、そんなの許さない…!翔、翔かける…!翔は俺のだ、別れるなんて許さない!」

翔の唇を噛みつくように塞ぐ。
翔。翔。なんでそんなこと言うの。言う言葉が違うでしょう?
いつもみたいに、愛してるって言ってよ。もうするなよって、俺だけ見ろって言ってよ。

抵抗もせず特に乱れもしない翔をしばらく無理やり深い口づけで押さえつけていた。それでもなんの反応もしない翔から、震えながら唇を離す。


「なんで…?なんでいつもみたいに、とろんってならないの…?お願い、翔、ちゃんと俺のキスに応えてよ…」
「…さっきも言ったけど、俺はもうお前を愛してない。だからいくらキスされても何も感じない。」


…うそだ。何も感じないなんて、絶対に嘘だ!
かっとなって、翔の服を引き裂き、胸に舌を這わす。尖りを舐めると、翔の口から甘いと息が漏れ、嬉しくなって翔の顔を覗き込んだ。

「うそつき。ちゃんと感じるじゃん。ね、翔。愛してる。愛してるから許して?今からはもう二人きりなんだからさ、うんと優しくするから…」
「…感じるのは物理的反応であって別にお前を好きだからなわけじゃない。誰だって嫌いな奴にでも性感帯を触られると反応はするよ。…俺を抱くつもりなら好きにすればいい。でもそれで終わりだ。終わったら俺はこの部屋を出ていくから」


翔の言葉に、全ての動きが一瞬にして止まる。
本気だ。翔は本気で俺から離れるつもりなんだ。

「しないのか?」

したいよ。だって翔は俺のだもん。俺は翔を愛してるんだもん。でも、でも…

「…だって…、抱いたら終わっちゃう…」
「抱かなくても終わるよ。どちらにしろ俺はもうお前とはいられない」

翔は俺の体をゆっくりと押し、床から起き上がると裂かれたシャツを脱ぎ捨てて先ほど集めたごみ袋の中に入れる。立ち上がって自分の部屋へ行こうとした翔に、今行かせたら本当に終わってしまうと焦った俺は咄嗟に翔の手を掴んだ。

「…お願い。翔。お願いだから許して。ほ、ほんとに、翔が好きなんだ。愛してるんだ。翔、翔だけ…!お願いだから俺を捨てないで…!ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい!」

ぼろぼろと涙を流し必死に懇願する。違うんだ。違うんだよ、翔。別れたくない。別れようなんてこれっぽっちも思ってなかった!


「嫉妬、させたくて…」

涙を流しながら、俺は自分のしてきた行為の理由全てを暴露した。

[ 22/495 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


top