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3

驚いて手の伸びてきた方を見ると、そこにはひどく不機嫌な達郎がいた。

「なん、」
「人の男食おうとしてんじゃねえよ。どっかいけ。」

うなるように言われ、慌ててかわいこちゃんが教室を出て行く。俺は何がなんだかわからなくて、達郎の腕を振りほどこうと暴れ出した。

「なんだよ!何しに来やがった!せっかく…っ、」

口から吐き出そうとした言葉は、目の前に迫った達郎の胸に吸い込まれた。

「たつ…、」
「…別れねえ。誰が別れるかよ。せっかく付き合えたってのに。」

離してたまるか、と言うと同時にさらに力を込めて抱きしめられる。俺を抱きしめる達郎の体がふるえているのに気づいて、俺はさんざん言ってやろうと思った文句を飲み込んで大人しくしていた。

なんで。なんでなんだよ、達郎。ヤれない俺には用はないだろ。

達郎が何を考えているのか、全くわからない。しばらく二人でそのままじっとしていると、達郎がぽつりと謝罪を口にした。

「ごめん…」
「え…?」
「あんな言い方、するつもりなかったんだ。でも…、俺…、お前が、経験豊富だって知って、すげえ悔しくて。
…俺、童貞だから。お前が誰かを抱いた経験があるなら、そうじゃねえ初めてが欲しかったんだ…!」

泣きそうな声で吐き出された告白に俺はバカみたいに口を開けてしまった。

だってそうだろ。めちゃもて男のこいつが、童貞?誰とも経験ない?

「う、うそだろ。だってお前、すげえって…」
「…初めては、好きな人とって決めてたから、告白とか遊びの誘いは全部断ってた。そしたら、いつのまに誰が広めたのか知んねえけど、俺はめっちゃ経験豊富みたいな噂が流れてて…」

眉を下げて情けない顔をするこいつの話はとうてい嘘だなんて思えない。まさか、チェリーだったなんて。

「昨日、そういう雰囲気になったとき、お前を押し倒したらお前いやがって逃げたろ。そん時、お前がいやなら俺が下でもって思ったんだ。だけど…、あの時、お前言ったろ。『ヤり慣れてんのは俺の方だ』って。それ聞いて、くやしくて。俺、意地になったんだ。ヤリ慣れてるから抱くのは自分だ、なんて…今までの奴らと同じ扱いされんのかって…」

そういや言い合いになったときにそんな感じのことを言った気がする。俺が何気なく言った一言が、達郎を傷つけてたんだ。

「…さっきのあいつには、ただ話を聞いてたんだ。その、ネコってどんな感じなのかって。あんな喧嘩しちまったけど、やっぱりおまえが好きだから。…お前が嫌なら、下でもいいかって思って。今までの奴らと同じでも、おまえが離れるよりはって思って。でも、ついお前の顔見たら意地張っちまって。まさか、別れるって言われるなんて思わなかった。
…なあ、もうだめか?やり直せないか?俺もお前と同じなんだよ。やるやらないじゃなくて、ただ一緒にいるだけでよかったんだ。やれないことより、せっかくのクリスマス、お前がいないことの方が辛え…。」

俺が下でいいから、なんて泣きそうな声で言われて俺は達郎の頬を両手でつかんで思い切り口付けた。

「ごめん」

謝ると、とたんにくしゃりと顔を歪める。そんな達郎の頬を挟んだまま、おでこをこつんとあわせた。

「ばか、勘違いすんな。お断りのごめんじゃねえよ。…俺も、意地張ってた。ごめんな、達郎。俺、確かに色んな奴らと寝てきたけど、こんなに好きになったのはお前が初めてだから。
好きだよ、達郎。別れたくない。俺と、まだ恋人でいてくれる?」


返事の代わりに、思い切り抱き寄せて唇を塞がれた。

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