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「皆さん、お茶にされませんか?」
キーボードを打つ音やペンの走る音が響く中、柔らかな声が通り机に向かっていた皆が一斉に顔を上げる。
お茶にしようと声をかけてくれたのは、副会長の相田の元恋人で親衛隊長の堤だ。その言葉に必死になって仕事を片付けていた生徒会役員の奴らが次々と『そうしよう!』と半ば懇願するように言う中、それぞれのサポートについている各親衛隊長に叱咤激励されながらまた席に着く。
夢が覚めたように白河から気持ちが離れた役員たちに待っていたのは、今まで自分がためにためまくっていた仕事だった。自業自得とはいえ、あまりの膨大な量に連日生徒会室に軟禁されている。
白河から離れた役員たちは、みなそれぞれ俺と同じように各々の一番大事なものに謝罪に行った。それは、それぞれの親衛隊長。それを受けて各親衛隊長たちは反省しているのならばともう一度手を差し伸べてくれたのだ。
だが、今までのような力関係のものだけではないらしい。特に会計の親衛隊長は敬語を使いとても礼儀正しいのだがその冷めた眼差しと口調が余計に怖いらしくゆるゆる会計はいつも泣きそうになっている。
書記と庶務双子の親衛隊長はどちらかというと包容系だから、見ていて心が和むが会計の隊長は見ていると会計と自分が重なってとてもかわいそうになる。
というのも、
「おい、何おまえも当たり前みたいに手止めてんだよ。顔あげるよりもやることがあるだろうが。返事しながらでも手は動かせんだろ?」
創路の容赦ない檄が飛ぶ。
そう。今まで俺以外の前では決してその本性を表さなかった創路が、皆の前でも素を出すようになったからだ。
「わ、わかってる!今やろうとしてたんだよ!」
「なら言い返す前にやれっつの。」
ぴしゃりと言い放たれ、ぐううと変な声を出してペンを握り直して書類に向かう俺に役員の皆が憐れんだ目を向けてくる。くそう。この俺様に恥をかかせやがって!
それでも創路の正論に言い返すことなんてできなくて大人しく書類を片付けていると創路がそっと横に来て体をかがめた。
「ちゃんとやりゃあご褒美が待ってんだろうが。後一枚。お茶が来るまでにできんだろ…?そしたら…」
「…っ!」
耳元で息を吹き込みながら囁かれ、顔にかっと熱が集まる。ちらりと目だけ上げると、そこにはドヤ顔でにやつく創路。
くそう。
「…できるに決まってんだろ。俺を誰だと思ってやがる。」
「くくっ、それでこそ会長」
それでも、ご褒美のために必死に頑張ろうとする俺は相当創路にイカレてる。
やってやるよ。俺はカリスマと呼ばれる男だぞ。だから…、だから、創路、
『愛してやんよ、お前が望むままな?』
さっき囁いたその言葉、実行しろよ。
俺様な俺を愛せるのは同じく俺様なお前しかいねえんだからな!
end
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