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6

「でも…、でも、俺が飯に誘っても一人で帰って食っちまうし、それに、俺が謝りに行った時だって、俺がいなくても困らないって…」

自分のせいで迷惑をかけたことは認める。自分の行動で、結局自分の首を絞めていたことも。でも、その途中で俺は創路に会いに行った。だけど、冷たくあしらわれたことをどうしても忘れられない。

「…あのな。俺だって、腹が立つことだってあるんだ。考えてもみろよ。好きな奴に『飯食いに行こうって誘われてうきうきして仕事を必死になって片づけて迎えに行ったら、当の本人はデレデレしたバカ面下げて他のやつと話しこんでるんだぜ。あげくに所かまわず口説きやがって、そんなもん見せつけられてみろ。謝りに来た所で素直にはいそうですかなんて言えねえだろ。言えなかったんだよ。お前が勝手に離れてったくせに、俺以外の傍にいることを望んだくせにって。」
「…!」

口をとがらせて拗ねたような表情をする創路と、その言葉にぐわんぐわんと頭が回る。今の。今のって。

「い、いつ、いつじ…」
「あ?」
「今、…好きだって、言った。好きな奴って言った!」

必死になって俺の手をつないでいる創路の手をぎゅううと握りしめ、ぐいぐいと座っている身を乗り出して問い詰める。
創路はそんな俺に目を閉じてはああと大きなため息をついて同じように俺の手を握り返した。


「そうだよ。言ったよ。好きな奴って。お前の事だバカ野郎」


…創路。創路はひどい。そんな大事な事、眉間にしわ寄せながら心底うんざりした顔で言うだなんて。
だからこそ、いつもと変わらない創路のその顔が、本当なんだって教えてくれる。

今まで、どれほどの奴らの言われて来ただろうか。それを創路が言った。ただそれだけなのに。

それを飲み込んだ瞬間、ボロボロと俺の目からは大粒の涙がこぼれていた。

「いづっ…、いづじいいいいい…!」

俺様なんてどこ行った風に泣きだす俺を創路が『きたねえ』なんて言いながら持っていたハンカチでぐしぐしと顔を拭く。それでも全然涙が止まらなくてしまいにひぐひぐと声を上げ始めた俺を創路がぎゅうと抱きしめた。


「なんで気付かねえかな。この俺が隊長なんてクッソめんどくさい事やってたのは、お前だからなんだって。なんでちょっと優しくされたくらいであんな奴に靡くかな。お前がほんとに欲しかったのはあいつじゃねえだろうが。ん?」
「ごめ…っ、ごめんん…!創路、ごめん〜…」

思えば。

創路がいつも俺に厳しくしていたのは、俺が生徒会長だから。それが俺の選んだ道だったから。

俺は不満だった。どうして創路は他の隊員には優しいくせに、俺には怒るんだって。白河に優しくされた時、俺はそれを求めていたんだって思った。

でも、それは間違い。

創路は厳しいだけだったか?怒るだけだったか?

答えはノーだ。

創路はよく怒る。仕事に対して厳しい。でも、それだけじゃない。その分、創路はいつだって俺をサポートしてくれていた。きちんと期日内に全て終わらせたときにはいつだって笑って『お疲れ様』と言ってくれていた。仕事の途中、ご飯を食べずにやろうとした俺を怒って無理やり休憩させて食事をとらせた。創路が怒る時は、いつだって俺が間違いを起こした時だけだった。

俺が。

俺が、ほんとに欲しかったもの。

「創路…!いつじがほしい…!創路以外いらない…!」
「ったりめえだろうが。俺以外を欲しいなんて言ってみろ、監禁してやっかんなてめえ」


あいかわらず俺以上の俺様な言いっぷりで、それでも魔法のように甘い声色で、


「愛してやるよ、全身全霊でな」


俺の全てを縛り付けた。

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