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「え…?だって、教室で…抱き合って…」
「…ごめん…、た、しかに、西条に、抱きしめられた…。でも、キスは、してない…。信じて…」
じゃあ、じゃあなんだ。いや、まて。あの時小暮は俺に背中を向けてた。角度によっては、キスしてるように見える。
てことは…俺の、勘違い…!?
「教室に、西条が来たの、綾小路の少し前なんだ…。俺がいて、びっくりしてた。驚いた拍子に、コンタクトが落ちたらしくて、拾うの手伝って…、見つけて立ち上がった瞬間に、西条がよろけて…」
小暮に抱きついたってわけか。
「そのまま、急にぎゅっとされてびっくりしたら、ちょうど、綾小路が…」
…あの野郎、俺が来るのが気配でわかったんだな!俺に見せつけるためにわざと小暮を抱きしめたのか…!
「なんで…、なんでちゃんと言わなかったんだ…?」
「…だって、綾小路、普段から西条には近寄るなって…。わざとじゃなくても、約束を守れなかったのは、俺だから…、
…綾小路に、申し訳、なくて、…っく…、ごめん、なさい…。ひっく…」
涙を流す小暮をみて、一気に体の血の気が引いた。俺は、俺はなんてことを…!
「んやっ…!」
小暮の中に入ったままのチンポを、慌てて引き抜く。抜ける感覚に感じたのか、小暮が小さく声をあげた。
そのまま、俺は小暮に向かって土下座した。
「すまない!許してくれ!」
「あ、綾小路…?」
「謝ってすむ問題じゃないかもしれないけど、本当にすまない!か、勘違いで、お前にあんなこと…!」
情けない。情けなさすぎて涙が出てくる。
小暮は、俺を裏切ったわけでもなんでもなかった。それどころか、西条と一緒にいたと言うそれだけの理由で自分が悪いと全てを受け入れていた。お前は、お前はなんでそんなに…!
小暮が土下座している俺の両頬に手をやり、そっと顔を上げさせる。
俺の顔は涙でぐしゃぐしゃだ。こんな、こんな情けない顔見られたくないのに。
「綾小路…、泣かないで…。悪いのは俺だから、綾小路があんなに怒るのも仕方ない…」
「ちが…、違うんだ、小暮…。小暮は、悪くない。俺が、俺が…。
…不安、だったんだ。不安になったんだよ、小暮…!」
つき合ってから、初めて弱音を吐いた。
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