肉食獣の憂鬱
「会長〜、いつまで続けんの?めっちゃ空気悪いんですけど」
「うるせえ」
上村の言葉を一蹴し、無言で書類を片付ける。山本も草壁も、滅多にない超不機嫌な俺にどうしていいかわからず居心地が悪そうだ。
申し訳ないとは思うが、今の俺には周りを気遣ってやる余裕がない。
理由は至ってシンプル。
―――小暮と、喧嘩した。
だが、普通の喧嘩じゃない。俺が一方的に小暮に腹を立てているのだ。
遡ること昨日の放課後、俺は仕事を終えて小暮の待つ教室に向かった。
「お待たせ!小暮…」
教室の扉を開け、小暮に声を掛けて固まってしまった。
西条がいたのだ。
それだけならまだいい。なんと小暮は、西条と抱き合いキスをしていた。俺と目が合い、ニヤリと笑う西条。目の前が真っ赤に染まる。
「てめえ…」
「じゃあな、小暮」
俺が何か言う前に小暮の頬を撫で教室から出て行く西条。
「…どういうことだ?」
残された教室で理由を聞いても、小暮は眉を寄せ俯くだけで何も言わなかった。
何で何も言わないんだ。無理やりじゃないのか。本当は西条がよかったのか。
苛立ちは止まることなく、だからといって真実を聞き出すこともできず。俺は小暮と、昨日から全く口を聞いていなかった。
仕事を終えて寮部屋へ戻ると、部屋の前に小暮がいた。俺を見て泣きそうな顔をする。
「綾小路…」
俺は小暮を無視し、部屋のドアを開けた。
全く目を合わせず、一言も話さない俺に小暮が唇を噛み俯く。
そんな小暮の腕をつかみ、部屋に引き入れた。
リビングまで引っ張り、向かい合う。二人の間に沈黙が続く。
「綾小路…、ごめんなさい…」
理由なく謝る小暮に、頭に一気に血が上った。
「…謝るって事は、自分が悪いことしたって事だよな?」
小暮は涙を浮かべますます俯く。俺は怒りと苛立ちで、もう自分が制御できなかった。
「許してほしかったら、俺の言うこと聞けよ」
そう言って小暮を風呂場に無理やり引きずっていった。
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