子猫ちゃんに甘えちゃう!
「しーおんちゃん!今日何の日か知ってるー?」
「…?」
リビングでテレビを見てる紫音ちゃんに問いかけると、んーと、んーとって首をこてんって傾げる紫音ちゃん。にゃんこ好きなのに知らないのかな?
「正解は、猫の日でーす!2/22、にゃんにゃんにゃんで猫の日だよ」
「へえ〜!そうなんだ!知らなかったや、先輩、そんなの知ってるなんてすごいね!」
ぱちぱちって拍手しながら純粋にすごく感心した目を向ける紫音ちゃんにいそいそと近寄る。まあね、これはただの前振りなんだよね。知ってても知らなくってもどっちでもいいんだよ。俺はただあることを実行したくてこれを持ち出しただけだから。
「猫の日だけど、寮だからここには猫がいないよね。二見さんとこも行けないし。ってことで、はい、これ!」
じゃん!と取り出して見せたのは、ネコ耳のカチューシャ。目の前に突如出されたそれに、紫音ちゃんがお目目をぱちぱちさせる。
そんでもって、驚いて目を丸くした紫音ちゃんの目の前で、取り出したカチューシャをそうちゃーく!へへ、皆さん俺が紫音ちゃんにさせると思ったでしょ?違うんだなあ。
「ってことで、ネコちゃん大好きな紫音ちゃんに、今日一日俺がにゃんこになってあげることにしました!かわいがって、にゃん?」
ネコ耳を付けて、手をくりんっとネコ手にして自分の頬の横でくいくいと招き猫して、紫音ちゃんを見上げる。
そしたら、紫音ちゃんがピキンと固まっちゃった。あれ、もしかしてドン引きされた?
「…っ、よしよし…」
「!にゃーん!」
とか思ったら、紫音ちゃんがそっと俺の頭をなでなでしてくれた。やったね、乗り気になってくれたかな?
嬉しくなって猫の鳴きまねして、ごろごろすりすり猫がするみたいに紫音ちゃんのお腹に頭を擦り付ける。
「にゃあ、にゃあん」
「…っ!」
「?紫音ちゃん?」
調子に乗ってゴロゴロ甘えてお手手をペロンって舐めたら、紫音ちゃんが口を押えてぶるぶると震えだした。やべ、調子に乗ったかな。気持ち悪かったかな。確かに、小さくも可愛くもない男がネコ耳つけてネコの真似して甘えてくるとか傍から見たらキモイだけかも。もし紫音ちゃんがしてくれたら俺は鼻血出す自信はあるけど。
「せんぱ…、
――――――…っかわいいい!」
「うわ!」
突然ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、ほっぺにちゅっちゅされて今度は俺の目が白黒する。ちょ、ちょっと待って!急にそんなことされたら、俺、理性飛んじゃうから!
「かわいい、かわいい、かわいい!にゃんこちゃん、おいでおいで!えへへ、ぎゅーってしてあげる!いいこいいこしてあげるー!喉の下なでなでしてい?お腹もなでなでしてい?」
「にゃ、にゃあ、」
「にゃー!」
おんなじように猫の言葉をまねながら俺をかいぐりかいぐりしだす紫音ちゃんにちょっとびっくり。それから紫音ちゃんは、ほんとににゃんこにするように俺のお腹を撫でたり、耳を触ったり、ぎゅうぎゅう抱きしめて何度もほっぺにキスをしてきたりといつもとは違うスキンシップに俺はもう飛びそうになる理性をつなぎとめるのに必死だった。
紫音ちゃんに甘えよう作戦のために考えたこれは、成功だったのか失敗だったのか…
「お風呂一緒に入ろうね、はるにゃん〜!」
「ぶはっ!」
「は、はるにゃん!?」
どこまで本気かわからない紫音ちゃんに翻弄されながら、今日の夜はにゃんこのふりして体中舐めまくってやると心に誓う俺だった。
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