×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -






それから僕は持ち直して、すぐにお母さんのお手伝いに行った。いつものように笑顔で一度は遠慮され、僕がお願いしてから申し訳なさそうに手伝いをさせてくれる。
とはいえ、組の人たちも手伝ってくれるからそこまで大変でもないし料理さえできてしまえば片付けなどは組の人たちがすることになっているので僕もその後はうらら君と一緒に皆さんとの会食に参加した。
恋ちゃんはどこがよかったのかわからないけれど僕の事をとても気に入ってくれて、食事の場所も僕の隣に座りあれこれと話しかけてきてくれた。反対の隣にはもちろんうらら君がいて、僕は二人に挟まれながら楽しいひと時を過ごした。
「これから先は大人の話だから、子供の私たちはうららの部屋で子供だけで楽しんでくるわ」
と言う恋ちゃんの鶴の一声で、会食が終わって、うらら君と恋ちゃんと僕はうらら君の部屋へ行った。
「相変わらずなんの面白味もない部屋ね。エロ本の一つぐらい置いてないの?」
「うるせえ、置いてるわけないだろ。咲夜の前で変なこと言うな」
恋ちゃんと話すとき、うらら君はいつもと違ってちょっと悪っぽいようなお兄ちゃんのような口調になる。そんな二人が微笑ましくて、見ているだけでも楽しい。
二人は兄妹みたいに育ったって言っていたけれど、本当に仲のいい兄妹みたいだ。
二人を見ながら、ふと先ほど山下さんに絡まれた時の事を思い出す。二人は美男美女で、はた目から見ても本当にお似合いだ。食事の前に恋ちゃんのお父さんが言った、恋ちゃんをうらら君にもらってもらうつもりだったっていうのは冗談ではないのだと思う。
「僕、飲み物持ってくるね」
「あっ、私も行く!」
「いいよ、恋ちゃんはうらら君と待ってて」
立ち上がってついてこようとした恋ちゃんを制して、笑顔で僕はうらら君の部屋を出る。うらら君は僕の事をよくわかってくれているから、きっと中で恋ちゃんを引き留めてくれているだろう。
「おい」
飲み物を取りに廊下を歩いていると、山下さんが現れた。ぺこりと頭を下げるとあからさまに睨みを利かせて舌打ちをしてくる。
「さっき言ったこと考えたか?」
「考えてません」
「はっ?」
きっぱりと告げる僕にハトが豆鉄砲を食らったような顔で素っ頓狂な声を出す。多分想像していた返事や態度とまったく違ったんだろう。
「おま…、あのなあ。わかってんの?河合組の親父は、ここの若頭だったひとで天海組との縁故も深い。そんな信頼厚いおやっさんの娘が世話になった組の親父んとこの坊ちゃんと一緒になるならどっちの組にとってもいい話じゃねえかよ。そこにお前はいらないの、邪魔なの。わかる?」
最初の威嚇とは全く異なり、まるで子供に諭すように話してくる。それでも僕はわかりませんと答えた。
「…てめえ、人が優しくしてりゃあ…いいか、お前は邪魔者、いらないの。誰がどう見てもお似合いなのはあの二人だろ!潔く身を引いとけって!」
「嫌です」
イライラした様子で僕に暴言を吐く彼に怯むことなく拒否を言葉にする。彼はまさか僕がこんなにも強く反抗してくるとは思わなかったんだろう。どこをどうみても普通の、ううん、普通よりもよわっちく見える僕はきっと山下さんの中ではすぐに怯えて泣いて身を引くだろうと思っていたに違いない。
「誰が何と言おうと、絶対に嫌です。僕は、うらら君が好きです。うらら君も僕を好きと言ってくれました。僕は彼を信じてますし、何が彼のためになるかは彼自身に直接聞きます。
…彼は、地獄にいた僕を救い出してくれた救世主です。僕だけの神様です。誰が何と言おうと僕は彼のそばにいるし彼が望まないなら離れない。僕を愛してると言ってくれる彼を信じてるから、僕も彼を愛してるから、誰が来たって譲りません」


[ 17/63 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]