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5

きこきこと自転車を漕いで屋敷へと向かう。

「おい、重くないか」
「へ?ああ、大丈夫ですよ〜。余裕余裕」

途中、幸人様が声をかけてきたので答える。

なに?俺の事気にしてくれてんの?
なんだ。
意外にいい奴じゃないか。

自転車を漕ぐ音だけが、二人の間を通り抜ける。
頬をなでる風が気持ちいい。

「…悪くないな。風が気持ちいい。
なかなかいい気分だ。」

背中から、ふ、と笑う声が聞こえた。
ちょっとだけ、その声にとくんと胸が高鳴る。


同じだよ、幸人様。
俺も今そう思った。


昨日大喧嘩をしたのが嘘みたいだ。
ゆっくりと流れていく街並みを無言で通り過ぎる。

「あ、坂道です。しっかり掴まってくださいね」
「あ?なに、…わああ!!」

ちょっとした急な下り坂を、ノンブレーキで滑り降りる。
急にスピードが出て幸人様がびっくりしたのか大声を上げた。
もしかして、自転車乗ったことないんだろうか。

「あは、あはは!」

慌てた様子がおかしくて、思わず笑い声をあげた。
俺が笑ったのに驚いたのだろうか。
わめいていた幸人様が、声を止めた。

「は、はは…。あはは!」
「あはははは!」

そのあと、俺につられるように声を上げて笑い出す。
俺もそれにつられて笑う。


長い下り坂、落ちないようにサドルをしっかりつかみながら。
ハンドルをしっかりと握りしめながら。


二人、馬鹿みたいにゲラゲラ笑いながら自転車を走らせた。


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