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3

「おかえり正明っち!今日も朝から御馳走様!」

屋敷に着くなり、待ってましたとばかりに黛がいい笑顔を向けながら寄ってきた。
御馳走様ってなんだ。

「咲人様も正明っちの事超気に入ってたよ〜!
あの後大学に向かう車の中で正明っちの事ばっか聞いてきたもん。」
「物珍しいだけでしょ。すぐ飽きますよ」

自分たちにかしづく優秀な執事たちしか見たことないだろうから、俺みたいに主人にあんな態度をとる執事なんて初めてだろう。
きっとそれが物珍しいだけだって。

「…正明っちって、不思議だね。」

特に表情を変えることなくそう言う俺を、
黛が笑顔のまま俺を見つめ、ポツリとつぶやく。
全てを見透かされそうなその目に、思わずどきりとする。

「なんて言うのかな?
人当りよさそうなのに、肝心の心は決して見せない…
みたいな?
万人を受け入れてるように見せかけて拒絶してるよね。
どんな人生歩んで来たらそうなるのか、不思議だね」

黛の言葉に思わず動きが止まってしまった。

まさかそんな風に言われるとは思わなかった。
へらへらしてるように見えて、意外に洞察力が鋭い。
さすが榊原家の執事に選ばれただけはあるということか。

「…気のせいですよ。
そんなの、俺めちゃくちゃ上から目線の人間じゃないですか。」

にこりと微笑み答えを返す俺を黛はじっと見つめていた。

「うん、ごめん、警戒しないでよ。
変なつもりはないからさ。
ただ正明っちともっと仲良くなりたいなあって思っただけ。
ごめんね?」

笑いながらぱんぱんと背中を叩いて肩を組んでくる。

「さ、お昼食べに行こう。」

…俺みたいなのと仲良くしたいだなんて、特異な人だなあ。

不思議に思いながらも、友人なんていたことのない俺はそれをちょっとむずがゆく思いながらも気さくでありながら引き際の潔い黛に好印象を持った。

黛に肩を組まれたまま食堂に向かう。
食堂に先にいた滝沢と高田が仲良く肩を組んで現れた俺たち二人を見て怪訝な顔をした。
その後、食事を済ませお迎えの時間まで屋敷内の細かい仕事を教えてもらい、あっという間にお迎えの時間になった。


「あれ?」

滝沢は別の仕事で抜けられないため、俺が一人で学校までお迎えに行くことになった。
さあ出かけようと車に乗り込んだのだが、エンジンがかからない。
バッテリーが上がったか。

「…困ったなあ」

整備士に交換してもらっても完了するまで待っていてはお迎えの時間には間に合わないだろう。

「すいませ〜ん」

俺は使用人部屋を訪れ、中にいる使用人たちに声をかけた。


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