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「それでは失礼いたします。
何かございましたらまたお申し付けください。」
事が終わり、ぐたりとする幸人様と男の子に一礼をして部屋を退室する。
滝沢は終始無言だった。
部屋に戻り、お茶をコップに入れてぐたりとソファに項垂れる滝沢に渡す。
「だいじょぶ?」
俺の問いかけにこくこくと無言で頷く。
「…悪い…。あんな、ことは、想定外で…。
学校でも、習わなかった…」
真っ青な顔でコップを両手で握りしめる。
そりゃそうでしょ。どこの世界に
『主人の情事にこのようにして混ざりましょう』
なんて教える学校があるっての。
この人クールなふりして意外と天然?
「気にすんなよ。
いきなりあんなこと言われりゃ誰だってビビるって」
意外とナイーブなんだな、と思いつつ先ほどの行為を思い出す。
…おかしいのは、俺か。
ふ、と自嘲気味に笑う俺に、滝沢がぐいとコップのお茶を飲みほして顔を向けた。
「…お前は、なぜ平気だったんだ。
あ、あんな行為を見せつけられて、尚且つあんな命令を…。
も、もしかして、な、慣れているのか」
滝沢と視線がぶつかる。
疑惑。
軽蔑。
不安。
恐れ。
困惑。
負の感情が入り混じって困惑した瞳を俺に向けてくる。
「…さあね」
俺は口元をちょっと上げて、滝沢から視線をそらしてお茶を一口飲んだ。それ以上何も聞かず、滝沢はずっと俺を見ていた。
その後、幸人様の部屋から出て帰宅しようとする少年を玄関まで見送る。
滝沢は真っ赤になり、気まずそうに少年から目をそらしていた。
うぷぷ。意外とウブなのね、と思ったのが顔に出ていたのか、滝沢がじろりと俺を睨む。
「またのお越しをお待ち申し上げております」
俺はそんな中、俺は少年ににこりと笑い頭を下げてやる。
少年は頬を染め、
「…またきます。あなたに会いに…」
と言って出て行った。
いやいや、ご遠慮願いたい。
あの行為で俺にハマったとかやめてくれよ。
滝沢がそんな俺にまた一段と怪訝な顔を向けてきた。
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