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そんな毎日が続いたある日、僕に奇跡が起きた。
お昼休み、教科書を片付けていると、目の前に山添君がいた。
「畑山、飯食おうぜ」
お弁当を僕の机に置き、後ろを向いて座ってにっこりと笑う山添君。
僕はぽかんとしてしまった。
「どしたの?食わねえの?弁当あるんだろ?」
「あ、うん、ある、あるよ!ちょちょ、ちょっと待って!」
僕はわたわたとお弁当を用意する。
山添君が、僕と。うれしい。嘘みたい。どうして。
ドキドキしながら、向かい合ってお弁当を食べる。
「帰りも一緒に帰ろうぜ。」
「…!い、いいの?なんで?」
「え?一緒に帰りたいからだけど。いや?」
僕は慌てて首を振る。
ゆ、夢みたいだ!山添君が、僕と一緒に下校してくれるなんて!
僕はドキドキしすぎて、お弁当の味なんかちっともわからなかった。
その放課後、山添君と並んで下校する。
…山添君、僕の歩幅に合わせてくれてる。
嬉しいな。今日は神様が僕にくれたご褒美なんだろうか。
「畑山んち、ここだろ?」
「あ…」
気がつくと、僕の家の前。…山添君、送ってくれたんだ…。
「明日から、迎えにくるから。昼も一緒に食おうな。じゃあな」
「あ」
お礼を言う前に、走って行ってしまった。
僕は信じられなくて、自分のほっぺをぎゅっとつまんだ。
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