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抱きしめる誠二の体が震えている。ああ、誠二も泣いてるんだ。


「お前に振られたあの日、俺がどんなに苦しかったかわかるか?俺がどんなに絶望したかわかるか!
やっと手に入れたと思ったものが、あっという間にすり抜けていく。蜜を与えられたと思ったら取り上げられ、二度と手には入らないと突きつけられた時の俺の気持ちが!」


ごめん。ごめんなさい、誠二。俺は、お前を傷つけるしか方法がわからなかった。
俺だって、苦しかった。でも、お前はきっと俺以上に傷ついただろう。


「お前はさっき俺に、
『俺のプロポーズを断る奴はいない、俺なら絶対に相手を幸せにできる』と言ったな。」


びくりと、体が硬直する。…そうだ。誠二はこれから、結婚の申し込みに行く。
震えながら、小さく頷く。


「なら受け取れ。これはお前のもんだ」


そう言って、俺の目の前に差し出したのは銀色のリング。


「せ、いじ…なんで…」
「一年前のあの日、お前に振られてまじでショックだった。ほんとに絶望したんだ。
…でも、家に帰って冷静に考えて、おかしいと思ったんだよ。だって、お試しとはいえ俺たちはうまくいってたはずだ。何より初めて抱いた日、お前は本当に幸せそうだった。
お前は口に出さない分、態度や表情がわかりやすいんだよ。」


誠二は優しく俺の髪を撫でる。


「だから、1ヶ月かけて調べた。そしたら、親の部屋でお前の念書見つけて。
そう言うことかと納得した。納得したと同時に決意した。親に口なんて出させない。俺は絶対にお前を諦めないって。」


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