8
俺は、びくりと体を硬直させた。
まさか。そんなはずない。
「なあ、誰を好きだって?」
固まる俺に、ずかずかと近づき肩をつかんで向かい合わせる。
「言えよ。誰が好きなんだ。」
出て行ったはずの、誠二がいた。
なんで。どうして。頭がついていかない。俺の涙は、さっきからずっと止まらない。
止めなきゃ。誠二に、変に思われる。
「言えよ!光彦!」
言えない。言いたい。言っちゃいけない。
「言え…!」
なんで。なんで誠二泣きそうなの。
言えない、言えないんだよ、誠二。言っちゃいけないのに…!
「せい、じ…、………っ、誠二が、好きなんだよぉ……………っ!結婚なんて、しないで…!俺を捨てないで…!」
一度口にした思いは、止めることができなかった。
泣きながら、心を絞るように叫んだ。
「やっと言ったな、このバカ…!」
そんな俺を、誠二がきつく抱きしめた。
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