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それから一週間、葛城の猛アタックは目を見張るものがあった。
ENJIは、俺様なので態度が物凄く不遜だし、冷たい。
ENJIに取り入ろうとする人間は、みなその態度と言動に心折れ、諦めるのだ。
葛城、よく心が折れないもんだ。
最終日の今日も、葛城はENJIにべったりと張り付いている。
今は雑誌の撮影中なのだが、撮影スタッフはみな葛城が真の付き人のように扱う。
ま、端から見たらそう思うか。
暇だし、俺は一人ちょっと休憩しようとENJIの楽屋に戻った。
「修二さん、もういいでしょ?」
一人で楽屋でくつろいでいると、葛城が現れた。
「なにが?」
「わかってるくせに。ENJIの付き人ですよ。僕に正式に、譲ったらどうです?」
俺をバカにしながら話す葛城。
「社長に言えば?」
俺に言っても仕方ないでしょうが。さらりと返すと、俺の動じない態度にむっとしたのか、葛城が睨んできた。
「もちろん社長にも言うよ。ただ、君が自ら席を空けた方が惨めな思いをしないですむんじゃないかと思って。
一週間、見てわかったでしょ?ENJIには、僕の方が合ってる。僕は取引先の令息だし、もちろん、ビジュアル的にも君なんかとは比べ物にならないし。
ENJIが今まで、なんで君みたいな平凡を付き人にしてたんだろうね?君がそばにいるだけで、ENJIの価値が下がると思うんだけど。」
えらい言いぐさだな君。ま、平凡てのは認めるけどね。
「…君の言い方だと、アイドルの付き人はみな美形じゃないといけないみたいだな。芸能事務所にいる人間みんなが美形とでも思ってんの?平凡な人なんか何人もいるじゃないか。
君の言い方はアイドルの付き人全員を侮辱してるよな。一生懸命仕事してる人を見た目基準で差別するなんて何様だって話だけど」
俺の言葉に、怒りで顔を真っ赤にし体をわななかせる葛城。
「凡人のくせに、僕に向かってえらそうに!ENJIに言って、君なんか二度とENJIのそばにいられなくしてやるんだから!」
ENJIが自分を選ぶと確信しているんだろう。仕方ない。
「葛城、今日仕事終わったらここに来て」
「…なに、これ」
「ENJIの自宅の住所。そこでENJIに決めてもらえばいい。俺も行くから」
葛城は、目を見開いた後、ニヤリと醜く口角をあげた。
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