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あのね、王子様ってほんとにすごいんだ!
あの日から、ぼくが良平といないとき、こけそうになったり荷物がいっぱいでドアが開けられなかったりすると、絶対王子様がきて助けてくれるんだ!
王子様ってやっぱり王子様なんだね、すごいなあ。
王子様の名前は白鳥雅史(しらとり まさし)っていうんだって。
二年生で、生徒会長もしてるんだって。会う度にお話して、色々教えてもらっちゃった。
不思議と、良平がいるときは現れないんだ。
さっきも一人でトイレに行って、廊下でこけそうになったんだけど、王子様が助けてくれた。
お礼を言って、少しお話して別れた後、ぼくがにこにこしながら歩いてると、廊下に人が立ちふさがった。
「君、林田哲平くん?」
三人の、真ん中の人が話しかけてくる。
ゆるくカールのかかった柔らかい茶色の髪、長いまつげにぱっちりした、猫みたいなちょっときつい目。赤い唇。
うわあ、良平とはまた違うけど、この人もお姫様みたいだ!
「お、お姫様!?」
思わず叫んじゃった。
お姫様の隣にいる人たちが、ぼくを見てくすくす笑う。
なんか、イヤな感じだな。
お姫様は、一瞬びっくりしたみたいだけど、顎に指を当てた後にっこり笑った。
「―そう、僕はお姫様なんだよ。白鳥雅史様の、お姫様。意味わかるよね?」
――――王子様の、お姫様。
言われた言葉に、目を見開く。
「あのね、お姫様の僕は最近とても悲しいの。何故かわかる?
理由はね、王子様がいつもお姫様じゃない人のことばかり気にかけるから。王子様が助けるのは、お姫様じゃないとだめじゃない?
ねえ、林田哲平くん?」
お姫様の言葉に、心臓がどんどん早くなる。
「僕はね、白鳥様が入学されてからずっとお側にいてお世話させていただいてるんだ。
だから僕がお姫様なの。ただの町の人が、お姫様の王子様を取っちゃだめだよね?」
頭ががんがん痛くなる。体も、がくがくと震えてくる。
「ご、めん、なさい…ぼく、ぼく…もう王子様に近寄りません…」
「わかってくれて嬉しいよ。もう、王子様に二度と近寄らないでね。」
そう言うと、お姫様は従者を伴って去っていった。
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