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12

「啓太君、ほんとごめんねー!」

あれからお店に行ったら、スタッフさんたちと高木さんに謝られた。なんと、スタッフ全員桜庭さんが僕を好きなことを知っていたらしい。


「店長に言われてたのよ、高田君は僕のだから絶対誰にも触らせないでって。でもあの日、忙しくて入ったばかりの高木に言うの忘れてて。ほんとごめんね。」
「おれ、あの後桜庭さんにブリザード浴びせられたっすよ。超怖かった。」



スタッフと高木さんの話に、顔が真っ赤になる。

「啓太君、おいで。」


桜庭さんが、優しく手を引き席にうながす。
今日は、伸びてしまった髪を染める日だ。
初めて染めてもらってから、もう三回目になるんだけど。



桜庭さんが、僕のためだけに作ってくれたあの色、染めてもらうときに桜庭さんに必ず言うように言われたことがある。



「今日は、何色にしますか?」



にこにこと笑いながら、桜庭さんが僕に聞く。
早く早く、といたずらっこのようにわくわくと僕の言葉を待ってる。
もう、この人意地悪だ!

「ぼ、僕を『ハニー』で、染めて下さい」


それは、カラーの名称を言うこと。
あの名前と告白に、こんなトラップが仕掛けられてるなんて気付かなかった。


「了解しました、ハニー。
…僕の色に、染めてあげる。」



満面の笑顔で言う桜庭さん。



そして僕はいつも、ハチミツのように溶かされちゃうんだ。


end
→あとがき

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