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ばん!とテーブルに手をつき、会長に自分のトレイを投げつけた。
「光矢!なんてことするんだ、謝れよ!」
「るっせえ!それはこっちのセリフだ!てめえが俺に謝れ!」
席を立ち光矢を怒る王道くんに、光矢が言い返した。
「な、なんで俺が光矢に謝らないといけないんだよ!あ、弥彦だけに食べさせたからか?焼き餅やいたんだな?しょうがない奴だな」
王道くんがまたもや嬉しそうに言うと、光矢は歯を食いしばりボロボロと涙をこぼした。
「そうだよ、焼き餅焼いたんだよ!悪いかよ!だって、だって弥彦は俺のだ!俺のだもん!なんで、なんでお前が、弥彦にあーんってするんだよ!俺の、俺の弥彦なのに!」
あっ、言っちゃった。
光矢の言葉が理解できないのか、王道軍団だけでなく食堂にいる皆がぽかんと口を開けまぬけな顔をしている。
光矢はハンカチを取り出し、泣きながらびしょ濡れの俺を拭き始めた。
「ずっとずっと我慢してたけど、弥彦がこんなひどい事されるのを見てるだけなんてできねえよ!謝れよ、バ会長!よくも弥彦に水なんかぶっかけやがって!謝れ!」
「わ、悪かった…」
光矢の迫力に、会長が素直に謝罪した。
「光矢」
俺が呼ぶと、光矢は一瞬体を硬直させ、カタカタと震えだした。
「ごめ、ごめん。ごめんなさい、弥彦。俺なんかと付き合ってるのがバレたら、弥彦が迷惑するって分かってるのに、こんなとこで…」
「「「「つ、付き合ってたの!!??」」」」
バレたのは今らしいですよ、光矢くん。
「でも、でもやだった!弥彦が、こいつにいつも連れられてるのも、こんな風な扱いを受けるのも!やだやだ、俺の、俺の大事な恋人だもん…!」
わんわんと泣きながら俺にしがみつく。
「や、弥彦…」
「弥彦って呼ぶな――――!!なんだてめえ、いつもいつも勝手に呼び捨てにしやがって!弥彦を弥彦って呼んでいいのは俺だけだ――――!!!」
「ご、ごめん!」
俺に声を掛けてきた王道くんに、がうがうと吠えかかる。
「光矢」
名を呼ばれびくりとする光矢を、そっと抱きしめる。
「…あのね、光矢。俺はお前との関係を、別に隠したいとは思ってないんだよ。」
俺の言葉に、光矢が目をぱちくりとさせて俺をみた。
「なんで?だって、俺、一匹狼なんて呼ばれてて、評判よくなくて…。もしバレて、や、弥彦が、そのせいで、いじめられたり、なんかされたりしたらって、俺、おれ…」
また泣き始めた光矢の口にそっと触れるだけのキスをする。
「お前が大事に思ってくれてるように、俺もお前が大事なわけ。だからもう隠すのやめよ?隠したりしてるから、こんな面倒なことが起きたりするんだよ。堂々と付き合おうよ。大丈夫、俺だって男なんだぜ?俺にもお前を守らせろっての。」
「弥彦…っ!うわあああん!」
「…俺だって、焼き餅やいてたんだからな。」
そう言ってじろりと王道くんを睨むと、王道くんは目をそらし下を向いた。
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