5
彼は、寒空の中二時間も立っていたせいで風邪を引いて熱を出してしまった。
幸い日曜日だったから、会社を欠席はしなくて済んだ。そして僕は、朝から彼の側でせっせと看病をしている。
「ごめんね、せっかくの休みなのに…。昨日かっこよく甘やかしたいとか言ったのに寝込んじゃって。」
しゅんとして謝る彼に、きゅんとする。ああもう、どうして彼はそんなに僕を甘やかすの。
「ぼくこそごめんなさい。だって孝明さんが風邪をひいたの、僕のせいじゃない。」
「でも…」
「しーっ。でもはなし。」
まだ謝ろうとする彼の口を、人差し指で抑える。
「いつも甘えさせてもらってるんだもん。こんな時くらい、僕に孝明さんを甘やかさせて?」
首を傾け、そう言ってにっこりと笑う僕に、孝明さんが顔を真っ赤にした。あ、かわいい。
「こっちも甘やかしてほしいなあ」
「…ばか」
いたずらっこみたいに笑って、自分の股間を指差す孝明さんの耳に、そっと近づく。
「…熱が下がったら、たっぷりね。僕も、甘やかして。」
その後、孝明さんの熱が上がってしまったのは言うまでもない。
end
→あとがき
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