5
良平が、静かに寝息を立て横たわっている。
気を失った良平を、俺は風呂に入れ中を掻きだし、服を着替えさせてベッドに寝かせた。
その間中、俺は手のふるえを押さえるのに精一杯だった。
眠る良平の髪を撫でる。
そんなつもりじゃなかった。
条件を出したとき、良平が泣いて許しを乞うたら、笑って冗談だと言うつもりだった。
哲平のことだって、手を出そうなんて思ったことはない。哲平は、本当に小さな子供みたいでかわいかった。ただそれだけだ。
ただ、無表情じゃない。どんな顔でもいいから、良平の違う顔が見たかった。
…俺は、哲平に嫉妬したんだ。
俺は良平が好きなんだ。
やっと事実に気づく。
気付くと同時に、恐ろしくなって良平の部屋を飛び出した。
その次の日。
朝、登校するために家を出ると家の前でばったりと2人に会ってしまった。
「おはようございます」
良平は、いつも通りだった。
完璧に、俺の負けだった。
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