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300万ヒット記念企画、第五位『強面バンビの綾小路桂』が記憶喪失になるお話です!
※基本綾小路視点ですが、そうでない視点で進むページもあります。
頑張ります!ではどうぞ♪
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「転校生?」
副会長の山本から差し出された一枚の書類を手に取りながら問いかける。山本は眼鏡のブリッジを上げながら頷いた。転入する生徒は皆、学園の事を一番把握している生徒会の役員がこの広い学園の案内と説明をすることになっている。そのために予め書類に目を通して案内する生徒の事を知っておかなければならないのだ。
「何でも家庭の事情で急に越してきたらしいですよ。」
「へえ…、あ、」
受け取った書類を見てその名前に目が留まる。
「こいつ、小暮だってよ!小暮テツヤ!ははっ、小暮と同じ苗字でしかも名前も一文字違いかあ」
新しく転入してくるその男子生徒は、俺の大事な恋人の小暮と一文字違いだった。
何だか親近感がわいて笑って言った俺の言葉に同じように笑って頷く面々も俺も、この転校生のせいでとんでもない出来事に巻き込まれるだなんて想像もしていなかった。
「へえ、転校生」
「ああ。しかも、『小暮テツヤ』だぜ。一文字違いとはいえこんな偶然があるんだな。あ、顔は全然違ったぜ。あっちの小暮はえらい可愛らしい女みたいな顔してたしちびっこそうだったな」
コーヒーの入ったコップを受け取りながら言うと小暮はちょっと眉を下げながら笑った。隣に座って自分のマグを両手で持ってコーヒーを飲む小暮にムラッと来てテーブルの上にマグを置いて小暮を引き寄せる。
「綾小路…?」
「ヤキモチ妬いた?」
小暮の顔見て気が付いた。多分、俺がその転入生に興味あるんじゃないかって思ったんだろ。
まあ、やきもち妬いた可愛い小暮を見るためにちょっとだけわざと言ったことは否めないけどね。
「こおんなに毎日毎日、かわいいって言ってんのに、鉄男ちゃんはまだ自信がないのかな〜?」
「あ、う…、だ、だって、」
「どんなに可愛い顔した奴だってお前にはかなわないっての。ほんとかわいい」
そんな顔しなさそうな強面が真っ赤になって眉を下げてもじもじするこのギャップ萌えが他の奴らに出せますかっての。
うるりと目を潤ませた小暮の手からマグを取り、テーブルに置いてそっとソファに押し倒しながらキスをした。
次の日、その小暮という転校生がやってきた。山本が迎えに行ってそのまま生徒会室に連れて来られた小暮。こっちの小暮は、背が低く可愛らしい顔立ちをした奴だった。緊張してるのかたどたどしく挨拶をして頭を下げる仕草が男の庇護欲をそそる感じがする。
「は、はじめまして。小暮テツヤです」
「俺が生徒会長の綾小路桂だ。わからないことがあったら遠慮なく聞けばいい」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
俺を見て小暮は深々と頭を下げた。そのまま山本が案内をして、小暮を転入するクラスに連れて行った。残ったメンバーの草壁と上村と共に作業をするために机につくと、上村がツンツンと俺の袖を引っ張ってくる。何事かと上村を見ると、何だか複雑な表情をしていた。
「なんだ?」
「かいちょ、あの子気を付けた方がいいよ。なんかやな感じ。」
「あ?」
眉を寄せて変な忠告をされて、同じように眉を寄せる。なんだってんだ。あいつがなんだって?
「気を付けるも何も、特に接点なんてねえだろ。クラスも違うしな」
こう言うことに関しての上村の勘を信じなかった俺はそののち激しく後悔することになる。
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