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アンケート第三位、マイディアキティ 晴海が記憶喪失になるお話です。


がんばります!
ではどうぞ〜


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魔法にかけてあげよう。どんなつらい事も悲しい事も消してしまう、大好きの魔法。



「せんぱ〜い!見て見てぇ、よそのクラスのお友達がくれたんだよ〜!」


ひらひらと晴海の目の前に嬉しそうに可愛らしいネコの模様のハンカチを振る紫音に、晴海はピクリと反応した。

よそのクラスのお友達…?

紫音の劇的な告白により、紫音が晴海の事を好きだということはほぼ全校の生徒に知られている。その後二人が付き合うようになった事は皆知っているのだが、中には純粋な紫音が晴海に騙されているのではないかと思う者もいるらしい。晴海の目を盗んで、こっそりアプローチを掛ける輩もいるのだ。
当の紫音は、梨音に向けられる邪な意識にはすぐに気が付く癖に自分に向けられるものにはとんと疎い。

またこの子、気付かずに色掛けられてんじゃないだろうな…。

よそのクラスってのが怪しい、と疑う心を一切かくして晴海はにこにこと笑顔になる。

「よかったね。自分のクラス以外にもお友達できたんだ紫音ちゃん。」
「うん、あのね。こないだ俺の目の前でこけちゃってね、足ひねって動けないってすごく痛そうだったから保健室に連れて行ってあげたの。そしたら先生がいなくってね。手当してあげたんだよ。」

はい、きました。フラグ立ちました。

晴海はにっこりと微笑んで紫音の頭を撫でると、これは詳しく聞かないとね、と一人頷いた。

「詳しく教えてくれるかな?そのお友達とのこと。」
「うん、いいよ。その後先生が帰ってきたからお大事にって言って先生に任せて保健室から出たら、その子がすぐに追いかけてきてね、お礼したいから放課後に残っててって言われて、昨日残ってたらこれくれたの。」

そう言えば、昨日はどうしても外せない集会があって俺と克也は二見さんの所に行ったんだっけ。

晴海は油断も隙もない、と見知らぬその男を心の中でボコボコにしていた。

「一人で行ったの?」
「ううん。そのお話をりーちゃんにしたら、りーちゃんが『一人で絶対に残ってちゃダメ!』って、クラスのお友達をたくさん連れて一緒に残っててくれたんだよ。教室に来たそのこ、また変な顔してたけどその時にこれくれたんだあ。」

晴海は克也の方にいる梨音をちらりと見ると梨音は同じようにこちらを向いて親指を立てていた。

ぐっじょぶ。

同じ意味を込めて晴海も親指を梨音に向けてたてる。
ただ、今はもう一つ確認しなければならないことがある。追いかけてまで紫音ちゃんに礼がしたいとか言う奴だ。絶対にしていることがあるはずだ。

「紫音ちゃん、これと一緒に何か入ってなかった?」
「あ、うん。お手紙が入ってた。なんかね、お友達になりましょうって。」

見せてくれるかなあ、とにこりと微笑むと何の疑いもなしに紫音もにこにこしながら一緒に入っていたであろう手紙を差し出した。

開いて読むにつれ、晴海の顔がみるみるうちに無表情になっていく。読み終わった後、手にあった手紙を握りつぶさないようにするのに精いっぱいだった。
すっくと立ち上がると紫音が不安そうに見上げる。

「せ、先輩?」
「…ぶっ殺す」
「!」

にやりと笑みを浮かべどこか遠いところを見る晴海は、まるで夜叉のようだったとその場にいた不良たちは語る。それを横で聞いていた紫音は一体何事かと驚きのあまり硬直して屋上の出口へ向かう晴海を唖然と見送ってしまった。

「は、晴海さん!だめっすよ!」
「どうしたんすか!」
「るせえ」

ただならぬ様子で屋上から出て行こうとする晴海を四方八方からチームの仲間が止めようとしがみつくも、それら全てを引きずりながら扉を開ける。

「おい、木村!晴海さん止めてくれ!」
「!は、晴海先輩!」

出て行こうとする晴海にしがみつくうちの一人から大声で呼びかけられて、ようやく紫音はハッと気が付いた。
何故かはわからないが、晴海が怒っている。そして、誰かを『殺す』と宣言して屋上から出て行こうとしているのだ。
慌てて追いついて、晴海の背に手を伸ばそうとしたその時。

「離せ!あいつ許さねえ!ぶん殴って…っ!」
「晴海さん!」
「晴海!」
「先輩!」

自分を止めようとしがみつく仲間を怒りにまかせて振り払うと同時に、その勢いでバランスを崩し、

「先輩…!せんぱ――――――い!!」

屋上から降りる階段を、晴海は転げ落ちた。




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