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返す言葉が見つからない。

「オレと一緒、そんなにやだ?」
「や、違う、イヤじゃない!」

悲しそうに首を傾けるあいつに思わず叫んではっとして口を押さえる。
ああ、再びオレのバカ!完全意識してんのバレるじゃん!

下を向いてしまった俺に、あいつが近づく気配がした。ふわ、とあいつの香水の匂いがしたと思ったら、オレはあいつに優しく抱きしめられていた。

「い、一夜?」

昔からあいつはスキンシップが激しくて、よくオレに抱きついたりじゃれついてくる。
でもこれは、いつものじゃれつくようなくっつきかたではない。優しく、まるで大事なものでも守るかのように腕をまわしてくる。

「和也」

ふいに、きちんと名前を呼ばれて胸が一つ跳ね上がる。な、なんだこれ。どうしたんだ?
あいつの方がオレより頭一つ分背が高いから、俺の顔はあいつの胸のあたりにあって、あいつの顔を見ることができない。

「オレ、和也に風邪引いてほしくない」

だから、あいつがどんな顔をしてそんなセリフを言ったとか、オレを抱きしめてるとかわからなかった。
でも、そう言ったあいつの声が、本当に本当に優しくて、オレはそんな意味で言われたわけでもないだろうにもう胸がいっぱいになってしまった。

ああもう、これ以上オレを惚れさせてどうするんだよ一夜。


「…わかったよ、一緒に寝る」

そうオレが言った瞬間、オレを抱きしめてる気配が、いつものただのじゃれつきの気配に変わった。

「きーまり!やったあー!今日は和ちんと一緒におねんねだあー!」

満面の笑顔になってぎゅうぎゅうと抱きついてくるあいつ。おねんねってなんなの、ばかなの。

苦しいだろ、加減しろ!

「一夜、ありがとな」

笑顔で言うと、あいつが一瞬目を見開いた。

「えへへ、和ちん大好き!」
「っ、はいはい、オレも好きだよ。」


さらりと、小さい頃のように言い合った。あくまで友達のように、でもほんとの気持ち。


一夜、一夜。オレも大好きだよ。だから、幼なじみでいいから、願わくばお前の側にずっといさせて。

「布団が乾くまで一緒に寝ようね!」
「…っ、そ、だな、まあすぐ乾くだろうけどな。」

そうやってお前は、オレの日常に非日常の爆弾を落とす。

それからしばらく、雨が続くなんてオレは知らない。
そして、布団を取り入れなかったのはあいつの作戦だったこともオレは知らない。

end

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