王子とカラス
ああ、空は青いなあ。雲は白いなあ。
アキラは、一人屋上でフェンスにもたれ空をぼうっと眺めていた。
太陽に酔っ払ってキスをされた次の日。太陽は覚えていないのか、至って普通に接してきた。引き換え、アキラはまともに太陽を見れない。
あの時。アキラは、太陽に組み敷かれ、心臓がばくばくと高鳴った。寝てしまった太陽からようやく抜け出た時、立ち上がるのも困難なほどに足が震えた。
あのまま、太陽が眠ってしまわなかったとしたら。
「…あんなに、でかくなってたんだな…」
自分を抱きしめた太陽の腕を思い出し、自身をぎゅっと抱きしめる。
あの時、俺がどれだけ力を込めても太陽はびくともしなかった。いつの間に、あんなにたくましい男になっていたのだろう。
自分を組み敷く太陽の逞しい腕。熱い胸板。…熱い、熱い唇。
「…俺、どうしちゃったんだ…」
あれから何日も経つのに、アキラは太陽のキスを思い出さない日はなかった。
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