互いにスイッチが入ってしまっていたけれど、ここがどこかを思い出し、距離をとった。
…あれがなかったら、こんな場所で確実に最後までしてしまっていたに違いない。
椅子に感謝。
時期に戻ってきた皆は私達の無事を安堵してくれた。
この部屋はエアリスが子どもの頃にお母さんと過ごしていた部屋らしい。
そんな部屋で私達はなんてことを、エアリスごめんね、絶対言えないけど。
「毎朝、お母さんだけが連れて行かれて、よく、ひとりで泣いてた」
それから、エアリスは古代種のことについて話をしてくれた。
エアリスは古代種の生き残り。
古代種というのは神羅が付けた名前で、本当はセトラ、というらしい。
神羅は約束の地を、ずっと探している。
ただ、エアリスは約束の地に関して知っていることはない。
神羅の強欲さに怒りを露わにしているバレットをエアリスが違うよ、と否定した瞬間、またローブを着た幽霊のような物体が現れ、私達をぐるぐると取り囲む。
いつまでたっても敵か味方か分からないけれど、今は敵ではないようだった。
「これは、フィーラーだ」
レッドXIIIは続ける。
「運命の番人という理解が最適だ。運命の流れを変えようとする者の前に現れ行動を修正する。言い換えれば、この星が生まれて消えるまでの流れ」
「運命は、変えることはできないの?」
ふと、クラウドが死んでしまった幻覚が頭をよぎり、私は聞く。
でも、あの時にフィーラーはいなかったはず。
「運命は決まっている…星は力尽きてしまうらしい」
「そんな真っ黒な未来に向かって俺達を巻き込むのか、フィーラーはよ」
バレットは、そう口にした後、待て待て待て、と言いながらレッドXIIIに詰め寄る。
そもそも何でレッドXIIIは、そんな事を知っているのか、と。
「さては、てめぇ…神羅の犬だな!?」
「犬ではない…エアリスが私に触れた時、フィーラーの知識もそこにあった」
あ、違うんだ。
いや、どっちの意味だろう。
理解しがたい話に何も言えないでいると、エアリスが、あのね、と口火を切った。
「私達の敵は神羅カンパニーじゃない。きっかけは神羅だけど、本当の敵、他にいる…私、どうにかして、助けたい。みんなを、星を」
「エアリスは何を知ってるの?」
ティファの問いかけにエアリスは軽く首を横に振る。
「今は、迷子みたい。動くほど、道が分からなくなる。フィーラーが触れる度、私のカケラが落ちていく…黄色い花が、道しるべだったんだ」
再会。
花言葉が頭をよぎる。
フィーラーがエアリスを激しく取り巻き始めると、私はエアリスの手をとった。
反対側は、ティファが。
「一人じゃないからね」
「大丈夫。一緒に考えよ」
私とティファの言葉にエアリスは、いつものように明るい笑顔で、うん、と言ってくれた。
それもつかの間、ドォン、と爆発音が響き渡る。
驚いていると、部屋にあるモニターの画面が砂嵐のようになり、ザー、と無機質な音が部屋に響き渡った。
『ようやく見つけたぞ!』
ドミノ市長が画面いっぱいに映っている。
私達に言っているのだろうか。
すると、画面が切り替わり、ウェッジの姿が。
『やっと会えたッス!』
ウェッジ、どうして、大丈夫なのか、と私達が言葉を投げかけると、ウェッジはお腹をポンポンと叩き、エルミナさんのご飯が美味しくて、と思い出しているのか幸せそうな顔。
『って、そんな話をしてる場合じゃないッス!』
ウェッジとドミノ市長によると、本家アバランチの作戦が開始されたとのこと。
混乱を起こしてプレジデントを狙う…。
爆破で厳戒態勢に移行されたが、まだ研究施設内は移動可能で、屋上にいるアバランチ本家のヘリが待機しているので、そこに迎えと。
ウェッジが頭を下げてくれたおかげで…私達に協力してくれる。
ドミノ市長が指定してくれたルートで屋上へと向かう私達。
閉じ込められていたモンスターが解放されていたことにより戦闘は余儀なくされたけど、 なるべく時間をとらずに片付けていった。
進んで行くと、今まで見たものより更に不気味な研究施設。
レッドXIIIによると、神羅の、闇。
何があるっていうんだろう、と辺りを見渡していると、閉じ込められているモンスター、だろうか、女性の体型のそれを見つける。
形容しがたい不気味な雰囲気を放っていて、怖い。
「…ジェノバ」
エアリスが口にした途端、最近感じる、あの痛み。
今までより一層強くなった気がして、頭を抑える。
また、クラウドも、と前を見ると、苦しみながらも前に進む背中が見えた。
その先には、銀色の長い髪をした、
「嘘」
本当に、あんたなのか、とクラウドはセフィロスに近づいていく。
駄目、このままじゃ、あの幻覚が現実になるかもしれない。
待って、と叫び出そうとしたけれど、声が出ない。
なんで。
「哀れだな…受け入れろ」
セフィロスの言葉に、クラウドは叫びながら剣を抜いて斬りかかろうとすると、振り下ろしたセフィロスの剣により足場が崩れ落ちる。
飛び上がったクラウドとセフロスの剣がぶつかり合う音が聞こえた後、セフィロスは言った。
「感動の再会だ」
そして、ちら、と私を見て言う。
「まだ、いたのか」
鋭い眼差しに心臓を握られたような感覚。
何も言い返せないでいると、セフィロスが左腕を振り下ろし、反動でクラウドが、下に、
「クラウド!」
私は何も考えずクラウドの後を追って、落ちていった。
**
「名前」
クラウドの声で、目が覚めた。
どこまで幸運なのか、目立った怪我はない。
それはクラウドも同じだった。
皆と離れてしまった私達は合流しようと先を急ぐ。
近くから匂いを辿ってきたのかレッドXIIIとは、すぐに合流ができた。
さっきのことが気になって仕方ない。
クラウドは何か知っているのかもしれないけれど、今とても聞ける気分ではなかった。
セフィロスは、まだ、いたのか、と私に言った。
まるでセフィロスが私の存在を消したいかのようで。
バレットと合流して、エアリスとティファの無事も確認できたけれど、今まで見た幻覚、私にかけられる言葉、そしてさっきのセフィロス…。
表面上溶けきっていた不安が、また形を持って私の中に生まれる。
あの幻覚が変えられない運命だとしたら?
私とクラウドが結ばれたことによって、できた運命だとしたら?
考えすぎだ、と言われればそれまでなのかもしれない。
でも、怖い、誰か、教えてほしい、本当の事を。
**
宝条の仕掛けを、かいくぐりながら研究施設を抜けて元いた場所に戻ってくると、ジェノバは姿を消していた。
紫色の血液のような者がジェノバの足跡のように続いている。
誰が、いや、もしかして。
追っていくと、社長室の扉の前へと辿り着く。
この先が屋上、この道を避けることはできなかった。
社長室の中には、プレジデントの姿もセフィロスの姿もなかったけれど、外から人の声が聞こえる。
誰か、いないか、助けてくれ、と。
声を辿ると、プレジデントが柵を越えた先の足場を両手で必死に掴んでいた。
手を離せば、地上へ真っ逆さま。
文字通り絶対絶命の状況。
「こりゃ愉快な状況だ」
「頼む…手が限界だ…謝礼ならいくらでも」
バレットが軽く笑うとプレジデントは必死に命乞いをしてくる。
プライドは高いだろうが、命には代えられないのだろう、私達が敵だろうが、おかまいなしの様子だった。
「金じゃねぇんだよなぁ」
そう言いながらも結果的にプレジデントを助けたバレットは、七番街の真相を伝えること、アバランチの名誉の回復を要求し、詰め寄る。
はい、とは言わず社長室に逃げ込んだプレジデントはデスクから取り出し拳銃をバレットに向けた。
「甘いのだよ君らは」
こいつ、どこまでも腐ってる。
銃を持ったプレジデントに下手なことはできず、動けないでいると、細くて、長い剣が、プレジデントの体を貫いた。
背後に見えたのは、間違いなく、セフィロスだった。
「てめぇ!」
バレットの声と同時にフィーラーが私達を取り囲み、道を塞ぐ。
ぐあぁっ、と、バレットの声が聞こえる。
フィーラー達の隙間から、セフィロスの刀がバレットの体を貫く光景が、
「バレット!」
これも、決まっている運命だっていうんだろうか。