「すまない」


自分の元へ戻ってきたネックレスを見て、少し安心したレズリーは私達への罪悪感からか謝罪の言葉を口にした。


「お前のもんじゃねえよな?・・・身内の形見か?」


バレットの言葉に同意する。

どう見ても、そのネックレスは女物に見えたから。


「家族はいない」


最初に、そう告げたレズリーは、ゆっくりと誰のネックレスだったのかを話してくれた。

過去にあげた恋人へのプレゼント。

半年前、彼女はコルネオの嫁に選ばれた後そのまま姿を消したという。

最後に、花言葉のことを話そうとしたけれど、忘れて、と言い、レズリーから去って行った、と。


「その時突っ返されたんだ。・・・ひどいだろ?結構いい値段したんだけどな」


自嘲気味に笑うレズリーに胸が痛くなった。


「話してくれてありがとう。レズリーが、ここに来た理由って」

「復讐だ」


私の言葉に、そう返したレズリーの口調は確固たるものだった。

あの時助け出したくれたのは私達に自分を重ね合わせたから、かも。


「今更だってことは分かってる。それでも片をつけないと俺はどこにも行けないんだ」


好きにしろ、というクラウドに、気に入ったぜ、と肩を叩くバレット。


「コルネオは俺にやらせてくれ」


そう言うレズリーに連れられ、さっきの扉の元へと戻る。

ここで待っていて欲しい、と言われつつも扉を開けて様子を伺う。

仕事の報告をしようとするレズリーに耳打ちさせようと呼び寄せるコルネオ。

コルネオの傍に立った瞬間、銃を頭に向けたが腕を捻られ持っていた銃を奪われてしまう。

・・・まずい。

私達にも緊張した空気が流れる始めると、コルネオが大声を上げ始める。


「レズリー!俺が何で隠れてるか知ってるよな?アバランチの子猫ちゃんに、ちぃ〜っと喋りすぎて神羅に睨まれちまったんだよ。プレートが、どががが〜んで、もっとも〜っと被害が大きくなるはずが!俺があの日嫁に選んだ女がスラムの奴らを避難させちまいやがって」


私のことだ。

そしてプレートが崩れた話を、さも面白い話のように、べらべらと話すコルネオに怒りがこみ上げる。


「ここだけの話、神羅はミッドガルを捨てて新しい楽園を作るつもりだ・・・さ〜て問題です!俺達みたいな悪党が、こうやって、べらべらと真相を喋るのは一体どんな時でしょうか?」


聞き覚えがある質問。

私の記憶が正しければ、この答えは、

スナイパーライフルの照準をコルネオに向ける。


「勝利を確信している時・・・」


レズリーの言葉と私の考えが重なったと同時、私の撃った弾丸がコルネオの銃に辺り、手元から離れていく。


「本当にそうか?」


クラウドがコルネオの首元に大剣を添えた。


「私の一発、どうだった?」

「お、お前は・・・!」


私はコルネオに嫌味ったらしい笑みを浮かべる。

ざまあみろだ。

七番街の件を問い詰めるバレットにコルネオは、あ〜!と目の前を指している。

こんな時に何を言っているんだと思ったのも、つかの間。

巨大な角を持つモンスターが私の前に背を向けて降り立った。

しっぽが振り庇った瞬間、私の後ろにいたレズリーを庇おうとすると、逆に庇われ、レズリーは扉の向こうへと吹き飛ばされてしまう。


「レズリー!」


するとグッバーイと逃げ出すコルネオ。

あいつ、逃げ足が速すぎる。

ひとまずこのモンスターを倒すしか、ない。

確実にモンスターを追い詰めていく私達。

けれど、モンスターが近接攻撃が届かない場所に飛び乗った瞬間、角が光り、私の目の前の大きな排水溝から聞こえて来る音が徐々に大きくなってくる。


「名前!」


クラウドが伸ばしてくれた手を掴むと、引っ張って抱き寄せられる。

私の横を、とてつもない勢いで流れて行く下水。

た、助かった・・・。


「名前、いけるか」

「もちろん、守られてばっかりって訳にはいかないもん」


そうか、と笑ったクラウドが降りてきたモンスターに渾身の一撃をお見舞いすると、呻き声と大きな音を立てて倒れ込んだ、やった。

レズリーが吹き飛ばされた扉を開けると、倒れ込むレズリー。

慌てて声をかけると、コルネオは!?と勢い良く起き上がった。


「すまねぇ、逃がしちまった」


バレットの言葉に、そうか、と俯くレズリー。


「また探すさ。どうせ他にやることもない」


視界の片隅で何かが光っている、レズリーが持っていたネックレスだ。


「コルネオを探すんじゃなくて、さ」


私はそう言ってキラキラ輝くそれをレズリーへと手渡す。


「彼女のこと探そうよ。その人を思う気持ちを、諦めるのは無理でしょ?」


レズリーはハッとした表情で私を見た。


「今からでも、遅くないかもしれない。こんなことしか言えないけど・・・頑張ってね」

「花言葉・・・どういう意味だったんだろうな」

「再会、だよ」


クラウドがティファに渡したお花の花言葉を調べたことを思い出す。

きっと、このお花は、あのお花と一緒だ。

レズリーは優しくネックレスを握り締めた後、あいつを探すのが先だな、と呟いた。






その後、上に行く方法、と言って私達にレズリーが渡した物はワイヤーガンだった。

目の前にある壁を越えれば七番街。


「レズリー」


私が声を掛けると振り向き、まだ何かあるのか、と不思議そうな顔。

どうしても、伝えておきたいことがあった。


「私にも大切な人がいるから人事とは思えなかったんだ」


クラウドにちら、と視線を向けてからレズリーを見ると、惚気ならいらないぞ、と呆れられる。


「ごめんって。そういうことじゃなくて・・・会えたら、絶対に離さないであげて。自分に自信を持ってね?レズリーは優しい人だと思う。彼女のこと、幸せにしてあげて」

「・・・あぁ」


優しく笑ったレズリーを少しかっこいいと思ったのは内緒。

一度上がると戻れないと思っておいた方がいい、レズリーの一言でバレットとティファはマリンの顔をもう一度見に行く、と言ってエアリスの家へと向かった。

俺一人でいいんだぞ、と言うバレットにティファは、ちょっとは気使って、とバレットの背中を叩いて私に向かってウインクを一つ。

二人きりでごゆっくりと言うことだと思う。

ティファの気遣いに感謝して、私とクラウドは大きな壁にもたれながら並んで座る。


「花言葉」


最初に話し始めたクラウドにえ、と返すとクラウドは続けて話を続ける。


「なんで知ってたんだ」

「えーと、クラウドがティファに渡したお花が、どんな花か気になって調べた時に」

「・・・ヤキモチか?」

クラウドは意地悪そうに笑った。

その顔、ずるい。

完全にフィルターがかかっている、何しても好きだって思ってしまう。


「別に!その時はクラウドの事、別に好きじゃなかったしね」

「俺は、あの時ティファの事、好きだったのかもしれないな」

「言わなくてもよくない?意地悪」

「何かとティファを推してきたのは名前だろ」


まぁそれは否めない、と黙る私。

でもレズリーと話してるだけで鋭い視線送ってくるクラウドに言われたくない、と少し口を尖らせていると、クラウドは、冗談、なんて言って口元に笑みを浮かべている。


「仕返しだ」

「クラウド、根に持つタイプ?」

「さぁな」

「じゃあ、更に仕返し」


私はそう言ってクラウドの頬に手を添えて、形のいい唇に、自分のそれを軽く重ねた。

ちょっと触れてすぐ離しただけの短い、短いキス。

クラウドの反応やいかに、と口が半開きで固まっているクラウドをじっと見ていると、茹でダコのようにみるみる赤くなってる。

真赤だよ、と声をかけても反応なし。


「もしかして、ファーストキス?」


恐る恐る聞いても、何も言わない。

これは無言の肯定ってやつかな。

軽い気持ちで奪ってしまって少し申し訳なさを覚えながらも、ちょっとした優越感に浸っていると、クラウドの口が動く。


「もう、一回・・・」

「え」

「もう一回、してくれ」


とんでもない事を口にするクラウドに、しょうがないなぁ、なんて言いながら、さっきより長めのキスをする。


「クラウド、好き」


二回目のキスの後の私の言葉に、次はクラウドから唇を重ねられる。

角度を変えて、何度も何度も何度も、何度も・・・。

何回したか回数が数えられなったぐらいのところで、ティファ達が戻ってくるからもう終わり、と言うと明らかに不服そうにするクラウドに、また私から短いキスをした。

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