壁を乗り越えると、そこには酷く崩れた街並みが広がっている。
思わず目を塞ぎたくなるような現状だった。

「ねぇお父さんは?お父さんは?」
「大丈夫だから・・・」

耳に入る街の人の声。
考えないように、考えないように、と、さっきバレットとティファがクラウドに言った言葉を思い出す。

「最初はよ…無愛想、気取り屋、過剰な自意識…いけすかない奴堂々一位だったが流石に分かってきた。本当のお前は違う。」
「そうそう、本当は優しいよね。名前には過剰なほど、だけど」

大好きな人が認められるというのは、やっぱり嬉しいもので。
アバランチのお父さんみたいな存在のバレットに認めてもらえたのもね。
そんな事を考えながらクラウドの少し後ろを歩く。

上に行く度に出現するモンスターを倒しつつ、ただひたすら、進む。
響き渡るプロペラの機械音の方へ目を向けると、神羅兵と神羅の機械兵器の姿が目に入った。
崩壊しているトンネルの影に隠れながら進んでいたけれど、神羅兵に見つかるのは避けらなかった。
目の前の敵を、ただひたすら、なぎ倒していく。

しばらく階段を上っていた所で、余りにも眩しい夕焼けに立ち止まって、目を細める。
…綺麗。

「名前、ティファ、また店やろうぜ」
「…うん」

私と同じようにティファも頷く。
生きていれば、できないことなんてない。

「クラウドも一緒にやる?」
「…名前が心配だからな」

素直に、うんとは言わないところがクラウドらしい。
心配されるようなことはないと思うけど、と返すと、理解してないならいい、なんて言われた。
気付いてるよ、ちゃんと。
--
「裏へ回ろう」

何階建てかすら分からない目の前の神羅ビル。
ようやく辿り着いた。
交差するミッドガル・ハイウェイに目が回りそうになる。
蠢く暗い緑色のような空気に頭が痛くなりそうだった。
クラウドが案内する駐車場へと向かうと、警備をしている神羅兵が、うじゃうじゃ。

「これは、警戒されてるよね、かなり」
「はっ、光栄だぜ」
「俺達以外にも敵がいるんだろう。アバランチの本体、あるいはウータイ」

私の言葉に続くバレットとクラウドと頷くティファ。
ウータイとは休戦中とのことだけど、休みはいつか終わる、というクラウドの言葉通り一触即発の雰囲気なんだろうか。
思ってた以上に神羅には敵が多いみたい。
反神羅への思いを我慢できないと言わんばかりに高らかに叫ぶバレットにクラウドが、ボムだって我慢すると突っ込んだのには流石に吹き出してしまって怒られた。バレットに。
その後、神羅の車に飛び乗るという仰天な提案を出したクラウドに身体能力を自分基準で考えすぎと心の中で突っ込みつつ、無事成功し地下駐車場へと潜入。
バレットがバランスを崩して落ちてしまったことによってド派手な登場にはなったけど、行く手を阻む神羅兵を蹴散らし、先を急ぐ。
我武者羅に進んで行くと、いつの間にかビルの内部に入れたのか、長いエスカレーターで上の階へ上がると目の前には神羅と書かれたロゴのモニュメントに、いかにも高級そうな黒い革のソファ、大理石の床。
自動ドアを通り抜けると、エントランスに出たけれど、誰もいない。

「逆に気味悪いね」
「そうだね、慎重に進もう」

私に同意してくれたティファはエアリスの居場所についてクラウドに尋ねる。
果てしなく上の階にある、と答えたクラウドに兎に角、上へ進もうとするもカードキーがないとなすすべなし。
封鎖されていた受付にあるカードキーを見つけた身軽なティファが天井から吊るされている巨大な照明を辿って受付に上から侵入。
凄すぎて自分の凡人さを痛いほど痛感した。
無事カードキーを入手して受付にあるパソコンで研究施設の場所を調べようとティファがキーボードを叩こうとした瞬間、封鎖されていた受付が解放される。
良すぎるタイミングに不安が募ったけれど、ひとまず65階へと向かうことへ注力しなくちゃ。

「まじか」

バレットに同感。
流石にエレベーターで正面突破という訳にはいかず、非常階段をひたすら登るという選択をしたのは私達だけど、想像するだけで眩暈がした。
今、持っているカードキーでは、ひとまず59階のスカイフロアまでしか行けないので、そこが終着地点。

「名前、大丈夫か」
「大丈夫じゃなさそうだけど、やるしかない」

最初から飛ばすと後から本気で足が動かなくなりそうなので、ゆっくりと確実に進んでいく。
ここならきっと見つかる事はないだろうし。
単純に身軽なティファと勢いで行くバレットは、どんどん先へ進んで行く。
クラウドは私に合わせてくれているのか、もっと早く進めるはずなのに私と並んでいる。

「大丈夫だよ、気にせずに先に行って。自分のペース乱すとクラウドしんどいよ」
「俺がこうしたいからいい」

そう言ってクラウドは私の手を取って足を進めて行く。
クラウドに引っ張られながら階段を登る形になってしまう私。
目の前のクラウドに目をやると少し耳が赤くなっているのが見える。
言い訳でもしないと触れられないのかなとか思うと、かわいくてかわいくて仕方ない。
自分の足にも力を入れて、ゆっくり、でもしっかりと階段を登って行こう。
--
45階付近。
流石のクラウドも私の手を引きつつで疲れたのかペースがかなり落ちている。
ティファは、もうそろそろ!と言う声が聞こえてきて、バレットはいつの間にか追いぬいて5階下ぐらいにいる、はず。
もうちょっと、もうちょっと…となんとか精神を保ちながら鉛のような足を上げていると、クラウドが遂に立ち止まる。

「…一度休もう」
「一回休んだら余計しんどくなるよ。ほら次は私が手を引くから頑張ろう」

差し出した手を握ろうとしないクラウド。
流石に私に引っ張られるのはプライドが許さないのか、私の手を疲れ切った表情で、じっと見つめているだけ。

「このままノンストップでゴールできたらご褒美あげるから、ね」

私の言葉にクラウドの体がピクッと動く。

「ご褒美」
「うん」
「何でもいいか」
「できる範囲でお願い」
「よし、行こう」

その後、息を吹き返したクラウドは私の手を引っ張って59階まで連れて行ってくれた。
…扱いやすい。
--
59階についた私達は、ひとしきり息を整えた後、スカイフロアへと足を踏み入れた。
目の前に見事な夜景が広がっている。
誰もがこの夜景に感動するんだろう。
でもこれが魔晄によって作り出された物って考えると素直に喜べない自分がいて。
いつか星に平和が戻ったら、これよりもっと綺麗な景色をクラウドと見に行きたいな。
きっと、叶うよね?

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