2 / 19



教室の窓際、一番後ろ。

空白の席。



「先生、ノート集めて来ました」


一人の女子生徒の言葉と同時に、ドサッと重みのある音が職員室内に響いた。
何冊も重ねられたノートは机の上にきっちりと置かれ、乱雑に散らかったプリントを下敷きにする。

『おー、サンキュ。いつも悪いね』

「当番ですから」

『佐倉がクラス委員でほんと助かったよ』

「先生、少し机の上片付けた方がいいと思いますよ」

そう言って呆れたように散らかった机上へ目を向けるのは、佐倉栞(サクラ シオリ)。

肩より長い艶めいた黒髪を低い位置で二つに結び、幼い印象を与える顔はメガネによって隠される。

通い慣れた高校では学年も上がり、今では高校二年生。
成績優秀であり真面目な性格の彼女が、クラス委員に選ばれたのは至極当然の事のようだった。

「じゃあ教室に戻りますね」

『あっ、佐倉!ちょっと待った!』

職員室を後にしようとする栞を呼び止めると、彼女の担任である松本拓磨(マツモト タクマ)は苦笑した。

見慣れた彼のこの笑顔は、栞にとってあまり良い予感のしない笑みだった。

「……なんですか?」

眉を潜めて尋ねると、ヒラリ、差し出された一枚の紙。

『これ、成瀬に届けてほしいんだよね』

その言葉に栞は目を丸くすると、みっちりと数字の並んだプリントに視線を落とした。




next≫≫
≪≪prev

<<< ホームに戻る


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -