13
ゆっくりと歩いていた澄は自分の気持ちを小さく吐き出しながら、とうとう足を止めた。
大好きな二人の幼馴染に気持ちを伝えてもらったのに、きちんとした答えを出せない自分がもどかしく惨めに思えた。
二人の気持ちと自分の気持ちは、一体何が違うのだろう。
同じだったとしても、その気持ちがどちらかに偏っているとは到底思えない。
こんな宙ぶらりんな状態で、二人の気持ちに応えることなどできない。
「私…二人とキ、キス…するのだって、嫌じゃなかった…。恋人同士がするものなのに…どっちも嫌じゃないなんて、へ、変でしょ……?私、おかしいんだよ…だから二人も私じゃなくて…、」
違う、誰かと……
そう言おうとして、言葉に詰まった。
他の誰かと一緒にいる二人を想像すると、胸が苦しくなる。
なんて、自分勝手な気持ちなんだろう。
俯いて黙り込んだ澄の頭に、優しい温もりが触れる。
いつも安心させてくれる大きな手。
「…今の、最後まで言われなくてよかった」
穏やかな口調にそっと顔を上げると、礼の何もかも包み込んでくれそうな笑顔が澄の瞳に映った。
「今のところ俺たち二人に望みがあるってわけだ」
そう言って礼はほんの一瞬律へと視線を送ると、澄の顔を覗き込んだ。
薄い唇が不適な笑みを作り、鋭い瞳が澄を捕らえて放さない。
「…澄、もう一度あの日と同じことをしようよ。三人で」
礼の口から発せられた言葉に、澄は淀みのない純粋な瞳で目の前にいる人物を見つめた。
まるで意味を理解していないような無垢な表情が、相手の情欲を誘っているとも知らずに。
「律が俺のところに来たのも、そういうことなんだろ」
「……まぁ、そういうことだな」
口角を上げて笑みを作ると、律はまだ状況が呑み込めていない澄の方へと近付いた。
「澄、俺たち二人はとっくの昔におかしくなってんだよ。ごちゃごちゃ余計なこと考えてないで、お前も早くおかしくなっちまえよ」
“あの日”と同じことをする……?
三人で……?
それって……
二人の提案をやっとのことですべて理解した澄は、躰全身に熱が走るのを感じた。