◎あの日の先生#1
(三時限目:4、5話参照)
宮藤は悩んでいた。
コンビニに煙草を買いに行くついでに必要なものを蓮に尋ねたら、「プリン!」と満面の笑みで言われたからだ。
当然そんな余計なものを買って帰るつもりはなかったのだが、あのしょんぼりと項垂れた姿がなんとなく頭に残っている。
たった数百円の代物で喜ぶのなら、買って帰るのもまぁ悪くないと思い直した。
ところがだ。
コンビニのデザートコーナー前まで来た宮藤は眉間に深い皺を寄せた。
プリンと一言で言っても、種類がいくつもあった。
この然程大きくもないスペースに、何故こんなにもプリンの種類が豊富に揃っているのか。
普段甘いものを全く口にしない宮藤にとって、理解し難いことだった。
そもそもコンビニのデザートコーナーに目を止めたのもこれが初めてだ。
…浅見の奴、また面倒なものを頼みやがって。
プリンを食べた事がないわけではないが、せいぜいスタンダードな味のものだけだ。
チョコだ牛乳だカスタードだと言われても、何がいいのかさっぱり分からなかった。
暫くその場に立ち止まって悩んでいた宮藤だが、とうとう面倒になって考えるのをやめた。
そもそも別に買って帰る必要などないものだ。
その場を離れて目的である蓮の歯ブラシを手に取り、レジへと並ぶ。
夕飯を作っただけで嬉しそうに尻尾を振っていた彼女の姿が思い浮かび、宮藤は再び眉間に皺を寄せた。
…本当に面倒くさい奴だな、アイツは。
頭の中で悪態を付きながら並んだ列から離れてデザートコーナーに戻ると、適当にプリンを数個手に取った。
考えるから面倒なのだ。
何個か買って帰ればどれか好みにヒットするだろう。
そうして風呂上がりの蓮が見つけたプリンは、何故か四個もあったのだった。