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「先生、これのどこがプレゼントなの……!」
ソファの背もたれに躰を深く預けた蓮は、左右に広げられた自分の脚を抱え込んでいる宮藤に向かって真っ赤な顔で抗議した。
『付き合え』と言った後に床に胡坐をかいて座り込んだかと思うと、いきなり両脚を持ち上げられ左右に開かれた。
起きてから宮藤に借りた大きめのグレーのパーカーを身に付けていたせいで、下半身をショーツ一枚で過ごしていたのが災いした。
今はもう、そのショーツが丸見えの状態だ。
「プレゼントなんてのは、俺にはこれで充分ってことだよ。お互い気持ちよくなれて、ちょうどいいだろーに」
「私の、理想と違う……っ」
「俺は物欲ねーから諦めろよ。物よりお前の方がいい」
「もぉ〜!ずるいずるいずるい……!先生ずるいっ……!」
「……何がずるいんだか」
顔を両手で覆い隠して抱えられた両脚をバタつかせている蓮を見て、宮藤は呆れたような声の調子で笑い混じりに息を吐き出した。
「つーか浅見、起きたらズボンぐらい穿いとけよ。脚冷えてんぞ。寒くないのか?」
「……寒いって言ったら、ベッドに行く?」
「いや、まずはここで一発。どうせすぐ熱くなるだろ」
ムードも何もあったものではない下品な発言に蓮の頬は瞬く間に真っ赤に染まると、ぶんぶんと首を左右に振った。
この教師にムードなど求めても無駄だと分かっていても、光の漏れる明るいリビングより、カーテンさえ閉めれば薄暗くなる寝室の方がいい。
閉めてもらえるかは、また別問題だが。
「先生、ベッド!明るいから、ベッドがいい!」
「プレゼントなんだから、俺の希望が優先だろ。ぬいぐるみなんてもの買いに行かせんだから、お前も少しは恥ずかしい思いしたらどうだ?」
口の端を吊り上げたその表情を見て、ぬいぐるみという意地悪が付け入る隙を与えてしまったことに蓮はほんの僅かに後悔した。
「……昨日も、したのに……」
「昨日は昨日だろ」
言うなり内股に優しく吸い付かれ、ぴくりと太腿が震える。
すでに期待で疼き始めた自分の躰を、静めるのは難しそうだった。
「まぁ、嫌ならやめてもいいけど」
するりとパーカーの裾から宮藤の手が滑り込み、ブラジャーを身に付けていない柔らかな膨らみを包んでやんわりと揉みしだく。
胸に触れながらも内股を這う唇が徐々に付け根に近付いてきて、蓮は短く息を漏らした。
「っ……、ずるい、先生……っ」
「それは、褒め言葉か何かか」
違うと言ってやりたいが、ぷくりと控えめに膨らんだ胸の突起を宮藤の指先に挟み込まれ、「あっ」と反射的に甘い声が出た。
自分で触ってもなんともなかったそこが、こんなにも敏感になってしまったのは宮藤による日頃の愛撫のせいだ。
文化祭二日目の夜以降、前戯だけでくたくたにされてしまうようになった。
どうやらあの日の前戯無しの性急な挿入を少し反省しているらしい。
おかげで蓮の躰は、宮藤にちょっと性的に触られるだけで芯から熱くなって、下腹部が疼いてしまうのだ。
以前からではないかと突っ込まれれば、否定はできないが。
「んっ、せんせ……っ」
宮藤の唇が太腿の付け根に触れ、チクリとした痛みが走る。
真昼間にソファの上で、見せつけるように両脚を広げている。
この後何をされるのか、嫌でも厭らしい想像が頭を掠め、無意識に蓮は興奮した。
「……なんだ、好きそうだな。ハマりそうか?」
自分の脚の間から見透かすような鋭い視線を向けられ、蓮は慌てて両手で目を塞いだ。
全部見抜かれている。恥ずかしい。
この体勢の恐ろしいところは、宮藤が何をしているのかすべて見えてしまうところではないだろうか。
「無駄なことしてんなよ」
笑い混じりに低く呟き、割れ目をなぞるようにショーツの上から宮藤の指がゆっくりと触れた。