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浅見蓮は悩んでいた。
高校の教師である宮藤に「好き」だと何度も告白しているというのに、いつも簡単にあしらわれてしまうからだ。
冗談だと思われているのだろうか。
いつだって真剣な気持ちだというのに。
学校内の教師の中で群を抜いて整った容姿をしている宮藤は、女子生徒から絶大な人気がある。
常に気怠そうで口が悪く、教師らしさの欠片も無いわけだが、外見の良さとは得するものだ。
「先生はちゃんと私の気持ち考えてくれてる?」
蓮の口から出た言葉に、宮藤は心底嫌そうに顔を歪めた。
「…まったく考えてないね。お前のようなガキに俺は興味ないの」
「ひ、ひどい…、ガキだからダメってこと?」
「そうだな、対象外なんだよガキは。俺はもっと大人の色気むんむんなエロい女が好きなの」
「え、エロい女……」
「そもそも未成年だし生徒だしエロさの欠片も無いし最悪だろ。お前にはリスクしかないんだよ」
「むうう…、どれもどうしようも無いことばっかり!」
「だから、どうしようもねーんだって。いい加減諦めろよ」
きっぱりそう言い切る宮藤に、蓮は頬を膨らませた。
「ま、どれもある程度時間が経てば解決すんだろ。成人してから出直して来いよ。そこまでお前の気持ちが持続してたらの話だけどな」
にやりと口許を歪めて蓮を見やるその視線は、完全に彼女の気持ちを今現在だけのものだと判断しているようだ。
蓮ぐらいの年頃の子が大人の男に惹かれる一時的な気持ちが存在することを認識している。
「…先生、私の気持ちを信じてないでしょ」
「信じるも何も、本気であろうがなかろうが結果は同じなんだよ」
生徒である蓮を拒絶している言葉だった。
宮藤の冷たい視線に蓮は唇を噛み締めると、すくっと椅子から立ち上がった。
「…帰るなら気を付けて帰れよ」
最早彼女を見ることもなくそう言うと、机に置いてあるパソコンを開いて仕事モードへと切り替える。
「……先生、私…本気だから」
小さく呟かれた言葉と同時に、パソコンを眺める宮藤の前へと蓮の顔がひょっこり現れた。
にんまりと笑うその顔に宮藤は怪訝な表情をすると、一瞬の隙を付いて彼女の唇が宮藤の唇と重なった。
僅かに触れるだけのキスに、宮藤は眉間に深い皺を寄せる。
「…お前、何考えてんだ」
「―…先生、私ガキだから分からないの。
…こどもの作り方、教えて?」