九月の終わりが近付いてきた。
そろそろ学校内での最大のイベントとも呼べる文化祭がやってくる。

蓮の通う学校では、十月の前半に文化祭が行われる。二週間程の準備期間がある為、九月の終わり頃からクラスごとに準備が始まるのだ。
この時期は学校内がどこか浮足立ったように盛り上がり、生徒達は真剣に準備に取り掛かる。

蓮にとって高校生活二回目の文化祭は、当然のことながら特別だった。
つい先日、一年の頃から思いを寄せていた高校教師の宮藤と秘密のお付き合いを始めたからだ。
秘密とは言えせっかくのイベントなのだ、少しぐらいは宮藤との思い出作りをしてみたい。


「蓮、今日の六限目のHRに文化祭の出し物決めるらしいよ」

四限目の授業が終わって昼休みになると、クラスメイトで友人の大野秋歌(オオノ シュウカ)が蓮の座る席へとやって来た。
秋歌とは中学の頃からの友人で、お互いの家もよく行き来している。先日友人の家に泊まると偽って宮藤の自宅にすんなり泊まる許可が下りたのも、頻繁に彼女の家に泊まっているからだろう。

「もう文化祭の時期かぁ〜、うちのクラス出し物どうなるかな」

「やっぱり飲食とかやりたいよね〜。可愛い服着たい」

「メイド服的な?」

「そうそう、こういう時しか着る機会ないじゃん。蓮もほら、宮藤先生好きかもよ、コスプレ」

「えっ」

悪戯な笑みを浮かべた秋歌の言葉に、蓮は目を丸くした。
一年の頃から蓮が宮藤に片想いしていることを知っている秋歌だが、流石に付き合い始めた事はまだ伝えていない。
信頼している親友に、このまま黙っておくのは心苦しい。この件に関しては近々宮藤に相談するとして、だ。

「先生…、どんなのが好きかな」

今はもう、宮藤が好む服装がなんなのか気になってしょうがない。
文化祭という学生にとっての大きなイベントに乗じて、宮藤が自分にどきどきしたりする状況を作ってみたい。

「宮藤先生ってそういうのあんまり興味なさそうだよね〜。リサーチが必要だよ、蓮!」

「そうだよね!本人に聞いてみる!」

「と言っても、宮藤先生好みになれるかはうちのクラスの出し物次第だけどね」

「そっか…、確かに…」

がっくりと肩を落とす蓮を後ろの席から頬杖を付いて見ていた蒼井は、うんざりしたように眉根を寄せた。
「くっだらねぇ」と心の中で毒づくも、相も変わらず宮藤のことばかり考えている蓮の様子はまるで面白くない。
“あの日”の出来事から休み明けの月曜日に、宮藤との関係についてどうなったのか尋ねたところ、「付き合うことになった」とぼそぼそと気まずそうに答えていた。

そうなるだろうと思っていたが、やっぱり気に入らない。
文化祭というこの絶好のイベントで、浮かれまくっている蓮に少しは意地の悪いことをしてやろうかと考えを巡らせる。

“先生をどきどきさせて、距離をもっと縮めたい!”

“浮かれまくった浅見にちょっと痛い目見せてやろうか”

二人の生徒の思惑を乗せて、文化祭への準備が始まろうとしていた。

当の宮藤はと言うと、文化祭という面倒なイベントに全くやる気がなかった。




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