一頻り宮藤の腕の中で泣いていた蓮も漸く落ち着きを取り戻すと、ゆっくりと顔を上げた。

「…やっと泣き止んだか」

「う、うん…ごめんなさい…」

呆れたような宮藤の言葉に蓮は頬を赤らめ、何か言いたげに瞳を泳がせた。
そっと目の前にいる宮藤の胸元のシャツを掴み、恥ずかしそうに視線を送る。

「あ、あのね、先生…。キ、キス…したい…です…」

最後の方はほとんど消え入りそうな声でそう呟くと、自分を見つめる宮藤の視線から逃げるように顔を伏せた。
宮藤からしてみると何をそんなに照れる必要があるのかと思う所だが、初々しい反応は新鮮で悪くない。

「浅見、したいなら自分からしてみろよ」

にやりと口角を上げて、俯く蓮の顔を覗き込んだ。
それだけで蓮は先程よりも顔を真っ赤に染め、口をつぐんでちらりと目線だけを上に向ける。

「お前、学校にいる時の方が積極的だったんじゃないのか」

「〜〜っ、あれはっ…、先生に近付きたくて必死でっ…」

「…残念だ、積極的な浅見は結構好きだったんだが」

「むむむっ…ずるいっ…」

にやにやと楽しそうに自分を見ている目の前の人物を恨めしそうに睨み付けると、蓮は意を決したようにベッドに膝立ちの姿勢になり宮藤の首へと腕を回した。

「せ、先生、覚悟して下さい…!」

「くっ…、」

「笑わないでっ…!目を瞑って…!」

「へいへい、どうぞ」

顔を赤くして真剣な表情で自分を見下ろしてくる蓮の姿に宮藤は笑いを堪えると、おとなしく指示に従って目を閉じた。

端正な顔を目の前に、蓮はごくりと生唾を飲み込む。

瞼から伸びた長い睫毛を見つめながら、宮藤の薄い唇へとそっと自身の唇を重ねた。
ちゅっと触れるだけのキスを一回し、吐息を漏らしてすぐにもう一度キスをする。
どきどきと高鳴る心臓の音が宮藤にも聞こえてしまうのではないかと思うほどにうるさく響いているが、今はもうそれどころではない。

何回か繰り返しキスをすると、宮藤の唇をペロリと舐めた。

「っ…、先生っ…!意地悪しないでっ…!」

「なにが」

「く、口開けて…!えっちなキスが、したいのっ」

羞恥から涙目になっている蓮と視線を合わせると、宮藤は口角を上げて彼女の腰へと両手を回した。

「んじゃ、とびきりエロいやつをよろしく」

この状況を楽しんでいる宮藤に対して、必死になっている自分が途轍もなく恥ずかしい。
それでも、したいと言ったら応えてくれる。
その関係が奇跡だと言う事を、蓮は知っている。

「…腰抜かしても、知らないからね」

小さくそれだけ呟き、再びキスを落とす。
促すように宮藤の唇が薄く開くと、蓮はゆっくりと口内へ舌を差し入れた。




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