New Lip

新しいリップを買った。マゼンタカラーの華やかな色、人気のブランドのとってもかわいいリップ。今まであまり頻繁に紅をさした事はないし、それこそこんなに鮮やかな色を選ぶこともしなかった。

「わ、思ってたより結構明るい……大丈夫かな……」

なんだか自分では似合わないような気がする。でも折角新しい色に挑戦したんだから。いつもより少しだけ背伸びをした装いで、彼の待つ場所へと向かった。

おうちデートという訳で、近くで評判のパティスリーの焼き菓子を買って行く。柚子を使ったものは無かったけれど、オレンジのマドレーヌと紅茶のサブレ、を手に取り包んでもらった。
ツキノ寮にそろそろ着く、というところで前から見覚えのある姿が見えてくる。

「あれ、名前さん?」
「英知さん。ランニングですか?」
「はい!」

向かう場所は一緒なのだからと走っていた足を止め、歩幅を合わせて歩いてくれる英知さん。

「あっそうだ。これ、家の近くのパティスリーで買ったものなんですけど、良かったら壱星くんと壱流くんと一緒に食べてください」

日頃のお礼にと、柊羽を経由して渡してもらおうかと思っていたけれど、折角会えたのだからその場で渡してしまう。ふたりも、きっと喜んでくれるだろう。

「ありがとうございます!そういえばリップの色変えました?似合ってますね!」
「ありがとうございます……。自分では似合わないかな、って思ってたんですけど、似合っているのなら良かった」

そのまま雑談をしながら歩いていれば、来てくれた柊羽がエントランスで迎えてくれた。

「それじゃあごゆっくり!お菓子、ありがとうございました!」

「おまたせ、柊羽」
「いらっしゃい。外で英知に会っていたんだな」
「角でばったりね。お菓子も渡せたし良かった」
「そうか」

いつもよりなんだか低い声な感じがしたけれど、少し怒って……嫉妬でもしている?

「新しい口紅を買ったんだな」
「自分では似合わないかもと思ったんだけど……似合うみたい」
「……英知がそう言ったのか」
「そうだって、言ったら?」

やっぱり。柊羽は嫉妬してた。新しいリップを買ったことに他意はないけれど、こうしてやきもちをやく柊羽が見れるのならたまにはいいかもしれない。そんな柊羽をもっと見てみたくて、普段は言わないような言葉を投げかけた。

「珍しく煽るんだな?」
「嬉しくって」
「はぁ……。こんな姿を他の男にも見せてたと思うと、やっぱり妬けるな。この口紅は俺と家で会う時だけにすること。いいね?」
「はぁい。ところで、肝心なことは言ってくれないの?」
「今日は積極的だな。……すごく似合ってるよ。沢山キスして、この腕にずっと閉じこめておきたいくらいに、な」




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