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余裕ぶってクールに見せる、
全ては君に…
阿久津SIDE
『なーんかこの席、飽きたなー』
一軍が少し大きな声で話せば、すぐに静かになる教室内なんて日常茶飯事だ。
そして全員が諭しているだろう、このあと起こるであろうことに。
名前の席は土屋くんの前の席。そんな席なのだから名前の発言に対して文句を言わない奴がいないなんてありえない。
「俺が後ろに居るってのに不満でもあんのー?」
「まさか、席替えるとか…言わないよな?」
土屋くんと東くん。文句を言わないわけがないよね。大好きな名前だ、自分の元から離したくないのはあたりまえ。
『んー、たまにはー席替えるのもー悪くないなー。よーし、けってーい。今から名前ちゃんと席をトレードしましょう大会を開催しまーす!』
あれはNo.2の顔だな、なんて思いながらいつものように平静を装う。
名前がNo.2に顔になるときは、とても土屋くんに似ている。冷徹で残酷で無邪気。彼と君の共通点、なんて思ったら冷静でも居られなくなる。
『うーん、どこの席にしよかっかなー♪』
品定めするように辺りを見回しながら席を見渡す。そして僕の所で視線が止まる。一瞬、にこっと笑う。周りの奴らには、にやっと笑ったように見えただろう。
『そこに決ーめたっ!』
指差した先は僕の右隣の席。いつもぬいぐるみを持っている松下唯。三軍。
「え、ここ…?」
「は、まじかよ。じゃあそいつが俺の前に来んのかよ、ざけんな」
怯えたような声で事実を確認する松下さんと、キレる寸前の土屋くん。
『ま、そーゆーことで、席トレーード!』
そう大声でいい放つと、すたすたと「元」自分の席に行き、東くんに机を持たせると、前に運ぶように指示をした。そして自分は椅子を持ったのだが、動こうとしない松下さんに気付いた。
すると名前は持っていた椅子を置き、松下さんの元に歩み寄ると、胸ぐらを掴みあげ立たせて、耳元で何かを囁いた。
すると、松下さんは机と椅子を持って教室の後ろの方へ移動し始めた。
きっと脅したかなんかしたんだろうななんて思いながらその光景を眺めていると、名前が僕の右隣へやってくる。
『んふふ、あくつよろしく』
その姿はいつもの女子高生名字名前に戻っていて、んふふなんて可愛いこと言われたもんだから、僕の心臓はもうとっくに限界を超えてる。
名前が隣にいるってことだけで手一杯なのに、冷静に振る舞わなくちゃなんてそんなのキャパオーバーで
(いつも僕の心を乱すのは君なんだって思って)
(もっと余裕がなくなるんだ)
おまけ↓
「平川さん!」
「あ、松下さん!大丈夫だった?あのとき、名字さんに何て言われたの?脅されたりとかしたの?」
「あ、あれは、『私あくつの隣がいいんだ、お願い代わって』って」
「そうなんだ、脅されたりとかしてなくてよかったー!」
END
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