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あの日以来、私たちは前のような関係に戻った。ギクシャクもしていない。
でも、一つだけ違うことがある。
私の気持ちだ。
もう迷いはない、蓮の隣に居たい。
蓮の隣は本当に心地よくて、私にとって、蓮の隣は特別な場所。
私は蓮が好きだ。
『(ただ、言う勇気がない…)』
『ん〜〜〜〜。』
席に座り、いすを傾けて仰け反って居ると、正光が視界に急に入ってきた。
「何唸ってんだよ」
『うをっ、びっくりした、正光か』
「んだよ、俺じゃ不満だってのかこのやろー」
拗ねたような言い方でぶつぶつと文句を言う。
『あーもーうるさいなあ、はいはい正光くんでうれしゅーございますー』
「…へへっ」
『へへじゃねえよなんだへへって』
正光と名前が馬鹿みたいな会話をしていると、蓮が教室に入ってきた。
「お、蓮きたぞ。俺は退散するかなー」
正光が蓮に聞こえないくらいの大きさで言うと、ひょこひょこ歩いてどこかへ行ってしまった。
『どこ行ってたの?』
「んー、ちょっと隣のクラスのやつにねー、用事。」
『ふーん』
「聞いといて興味ないのかよっ!」
『なははっ!』
「………」
急に蓮が俯き黙ってしまって、なんだろうと思い覗き込むように見ると、もどかしそうな恥ずかしそうな顔で目をじっと見てきた。
『な、なに…?』
「お、俺…っ、えっとー、そのー、」
もしやこれは…。
確信に変わったのは蓮の顔が赤いこと。ただそれだけの事だけど、動き出した私の腕は止まらない。
蓮の手を自分の両手で思いっきり包み込んでぎゅっと握りしめ、目をしっかりと見て。
『好きですっ、!』
言うんだ。
簡単なことだった。
(一歩踏み出す勇気)
(くれたのは君の赤い顔)
END
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