しかし、その人とはあっさり再会できた
二週間後のことだ。

なんてことはない。
同じ駅を使っていて、同じ電車に乗る人だった。
いつも同じというわけじゃないから気づかなかった。
たまに遅くなったときに時間が重なるのだ

「あ、あの!」

その日は残業後だったため同じ電車で、降りるタイミングが一緒だったから気がついた。
反射的に駆け寄って声を掛けたものの、目を向けられて思わず怯んだ。

こ、こわい。

「わ、わたし、いつぞやの助けてもらったものですが」

「……うん」

「え、えと、そ、その節は有難うございました!」

いい大人とは思えない礼の仕方だ。
深く頭を下げると、感情のない声で、うん、と頭上で聞こえた。

「そ、それで、お借りしたタオル、返そうと思ったんですが、どろどろでだめになってしまって」

「ああ、いいよ別に」

「いえ!買って返そうかと思ったんですが、同じのが探せなくて、それで……」

私は鞄から財布を引っ張り出し、千円札を三枚取り出した。

「これで、弁償になれば」

「いや、ふつーのタオルだから」

「いえ、ほんとうにすみません」

「そういうつもりで渡したんじゃねぇし」

「いえいえ、とても助かったので」

彼は固辞したが、私は頑として引かなかった。
ここで渡せなかったら、この二週間悶々としていた気持ちが晴れない。

「あーじゃあわかった」

何度かそのやりとりを繰り返した後、彼は困ったような呆れたような口調でそう言い、千円札を握った私の手を軽く叩いた。

「これで飯おごって。それでいい?」

予想もしなかった展開に、次に困惑したのは私だった。
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