END


「あー終わっちゃった」

「まだ残ってるやろ」

二人分にしては量が多かったのに、やってみるとあっという間だ。
終わった花火をバケツに放り込むと、勇介が線香花火を差し出してきた。

しゃがみこんで花火を受け取り、火をつけてもらう。
ちりっと花火が燃え始め、静かに火花を散らし始めた。

さっきとは打って変わって、周囲が暗く、静かになる。
二人分の、ともった灯りと火花の音。
まるい火の玉が重たげに揺れる。

夏が終わる。
わけもなく、涙が溢れそうになった。
どうか、まだ落ちないでいて。
このまま時間を止めてほしい。

「俺、大学受けるわ」

ふいに、勇介が口を開いた。
花火から目を離し、私は勇介の顔を見る。

「東京の大学行く」

そう言って、勇介は顔を上げた。
行くなと言った、あのときの言葉を思い出した。

あれから私たちは変わったけれど、この想いだけは変わらないのかもしれない。
いつまでも同じようにこの胸を焦がし、何度会っても繰り返し同じことを思う。
離れたくない、と。

「……待ってるね」

花火を持った右の手首が熱を持ち、ぽとりと地面に火が落ちる。
続けて、勇介の線香花火も後を追うように燃え落ちた。

願わくば、次の夏も同じ時間を過ごせますように。
遠くない未来に思いを馳せて、私たちは過ぎ去っていく夏を見送った。
END

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