12
次の日、勇介とは会わなかった。
以前から顔を出せと言われていた、伯父さんの家に行っていたからだ。
なんとなく顔を合わせづらかった、というのもある。
私の勝手だけど、今までどおり勇介と会える気がしなかった。
だけど、それとは裏腹に、会いたいと強く思う。
もう時間がないのに、私は一体何をしているんだろう。
縁側に座り、ぱたぱたと団扇で顔を扇ぎながら日の沈んだ空を眺めていた。
おじいちゃんの家の夕食は早くて、もうすでに片付けまで終わっている。
もう、明日には帰るのか。
俯いた向日葵を見ながら、私はひとり感慨にふける。
早かったな。
思ったより楽しかった。
勉強はあまり進まなかったけど、おじいちゃんとおばあちゃんとゆっくり過ごせたし、自然の中でのんびりできた。
横に置いた蚊取り線香の香りが、つんと鼻をつく。
ただひとつ、心残りがあるとすれば……。
「美緒」
ふいに名前を呼ばれて、反射的に声のほうへ顔を向けた。
私は驚いて目を見開く。
庭から入ってきたのだろう、薄暗い中に立っていたのは、勇介だった。
「花火しよ」
突然の言葉に、私はきょとんと目を瞬かせる。
「花火」
もう一度言って、勇介は持っていたビニール袋を持ち上げた。
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