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庭に咲いている大きな向日葵。
軒下で揺れる風鈴の音。
扇風機から吐き出される生温い風。
昼食後、テーブルに参考書を広げて格闘するものの、暑さにげんなりしてしまう。
「進まない……」
ばたりと倒れた私を見て、台所からおばあちゃんが笑いながら声を掛けてくる。
「ほんなら、ちょっとおつかいに行ってほしいんやけど」
「どこに?」
「勇ちゃんとこ」
その言葉に、どきりと心臓が鳴る。
勇ちゃん。
勇介。
近所の同級生だ。
「これ、このスイカあげてきてな。昨日取ってきたんや」
行くとも言っていないのに、おばあちゃんはさっさとスイカを玄関のほうへ持っていく。
どうしよう、二年半ぶりだし、なんだか行きにくい。
そう思ったが仕方がないので起き上がり、日傘とスイカを持って外に出た。
勇介の家まで五分。
人が少なくても土地はある。
家同士が離れているので、五分くらいは近所中の近所だ。
同年代の友達の中では一番家が近くて、家族同士も仲良が良かったのでよく遊んでいた。
よくというか、いつも。
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