心配症な皆











携帯を、パカリと開く。

そこには両親からの着信が幾つもあり、

いつまでたっても帰ってこない私の事を心配して

連絡を入れてくれたんだろうと

安易に予想がついた。



「ただいま」

「風花!

 一体こんな時間までどうしてたっていうの!!」

「学校にも電話を入れたんだぞ!

 一体何をしてたんだ!!」


生憎扉を開けたらお父さんもお母さんも怒っていて、

私は苦笑いを零した。


「あのね、ちょっと……

 知らない人に頭殴られちゃって」


そう言ってくるりと後ろを向く。

私の頭には血がこびりついていて。

その酷い傷跡にお母さんは小さな悲鳴を上げて、

お父さんは大きく目を見開いたまま、

固まってしまっていた。






 
「この事は、警察には言わないで。

 もうあの人達のお世話になるのは

 こりごりだから……」

「………」「………」


真白い包帯が電灯の光を反射させる。

両親は黙ったまま、

目を左右に泳がせた。


「たまたま金属バットみたいな

 重い物が入っているバッグを背中にしょってる人が居てさ、

 その人がたまたま振り向いたか何かをして

 頭にゴーンっとそれが当たっちゃったんだよねー」


なるべく元気な声でそう言う私を、

お父さんもお母さんも見ないで

ただただ目を泳がせるだけ。


「……今日は連絡も入れずに

 帰りが遅くなっちゃってごめんなさい。

 明日からは遅くなりそうだったら、

 ちゃんと連絡を入れるね!」


気まずい雰囲気の中、ガタリと立ち上がる。


「それじゃあ部屋に戻ってるけど……

 あ、晩ご飯は要らないや!

 全然お腹空いてないし」


そう言うと、

軽い足取りで部屋までの階段を

一気に上ってみせた。


まるで両親を心配させないかの様に、

自分は元気だと、

両親に伝える為に。




でも本当は全然元気じゃなくて。

部屋に入ったその瞬間、視界はぐにゃりと曲がり、

勢いよくベッドにダイブした。


「…よく平気な顔を保てたよね、私……」


あははと乾いた笑い声は、

部屋の中に消えてなくなる。


「…………」


ポケットから取り出したのは、あのディスクと合鍵。

何度も家に帰るまでの間、

今の出来事が嘘だったら、夢だったらいいのにと思った。


でも現実はそんなに優しい物じゃあなくって。


後頭部から響く

ズキズキとした音楽がそれを証明していて。

やけにポッケが重く感じるのも、

またそれを証明していて。


「…とりあえず、

 あの『ルーク』っていう男の子は

 何者なんだろう……」


何が目的で、

生徒会長室のパソコンに眠る情報を欲しがるのか。

どうやって、誰から、

私のあの忌まわしい過去を聞きだしたのか。


「…何一つ、分かんない…」


虚ろな瞳はただただ周りの風景を反射していて。

やがてはその風景でさえ、

少しずつぼやけていった。









 ▼後書きのコーナー

 最後の文の、
 「---風景でさえ、少しずつぼやけていった」
 のには理由が二つ程あります。
 勘がいい人は気付いてると思いますが、
 是非皆さんも「なんで風景がぼやけていったのかな?」と
 想像してみてください。

 という事で今回もまた
 シリアスな展開……。
 ……どんだけ管理人はシリアスな展開が好きなんだよ…
 という呟きは
 管理人には聞こえない様に呟いてください←

 …嫌、でもシリアスな展開の方が
 書きやすいじゃないですか!(ばんっ)
 …あれ、それって私だけですか?
 え?どなたか同士様は居ませんか……?(汗





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