ルカ中尉の昇格












「はい、ルカ中尉」


少女の嫌いで嫌いでたまらない女嫌いな上司、

不音隊長から渡されたのは―――


「……昇格状……?」


それは『中尉』という地位に居る少女の

『大尉』への昇格を意味する、

一枚の紙だった。


「…これまた随分と『異例』だな…」

「…今回のユーリ・アルへイド大佐との戦闘を

 一部の幹部とその他らが高く評価してね」


そう言う不音の脳裏には、

にやりと不敵に笑うセナの姿が映し出されていた。


「その幹部が言うには、

 『まだ任務も経験していない経験の浅はかな団員が、

  初めての戦闘で

  ここまでの強い意志と強さを示した事に、

  大いに感動した。

  とても見込みのある団員だ』って

 幹部達の前で堂々と好評してね。

 その言葉に押される感じで

 君の短期間での昇格が実現したって訳だ」

「………へぇ……」


余り興味がないと言った様子の少女に、

ロビンは苦笑いを零した。


「…本当に、ルカって地位とかに興味が無いんだな…」

「…あんまりね。

 だってどの地位に居たって大した差はないでしょう?

 それに上に行けば行くほど責任感も増すし…

 仕事が増えるだけだし……」

「…まあそれも一理あるね」


不音は溜息混じりにそう呟くと、

そんな様子とは打って変わり、

『不音隊長』としての表情で少女に言葉を紡ぐ。


「けれども、『大尉』になった事で

 君には参加してもらわなくてはいけない任務が

 一つ出来た」


そう言うと、

不音はもう一枚の紙を少女に手渡した。


「『王子様護衛任務』……?」

「この国の第八王子にして、

 次期王の第一候補『エイト王子』に先日脅迫状が届いたんだ。

 そこで自警団では―――」


「ちょっと待ってください」


不音の言葉を遮る少女。


「――……なんだいルカ大尉」

「エイト王子ってあの……エイト王子ですよね」


どこか落ち着かない表情の、少女。


「……?

 エイト王子が何人も居る訳ないぜ?ルカ」


そんな様子に違和感を覚えるロビンと不音。


「…だよねぇロビン……」


そして次の瞬間少女は、


思いっっっきり怯えた表情で二人の事を見つめ、

そしてこう言い放った。




「あの人≠ノ脅迫状を送るなんて……

 馬鹿だ…その人命が惜しくないのかな…

 本当可哀想だ…その人……」





「……ちょっと待って、

 君、エイト王子と知り合いなの?」


不音の鋭い眼差しが少女の事を射抜く。


「……えぇ、まあ。

 家柄同士の交流というか…なんというか……」

「随分と歯切れが悪いなぁ。

 普通王子と知り合いだったら

 鼻が高いもんだろ?

 なんでそんなに嫌そうなんだよ」

「……あの人は……

 『大地の加護』を受けた王子だから……」


そう言うと、少女はそれ以上は何も

口にしようとしなかった。


(…大地の加護…ねぇ……)


そんな中、

不音は心の中で静かに呟く。


(噂は聞いた事があるけども……

でもその本当の意味を知っている人は

ごく僅かだと言われている謎の王子……)


そしてそんな王子と面識があり、

更には『大地の加護』という意味を

理解している様子を見せる少女は、

一体何者なのか。


「………」


不音は暫く少女の事を見つめると、

やがてはその任務についての説明をしだした。











 ▼後書きのコーナー

 はいっという事で遂に第三章王子様護衛編が、
 始まりましたー!
 そして初回でこの文の短さ…
 流石管理人クオリティー…!!←

 エイト王子…個人的にはかなり好きなキャラなので、
 早く出してあげたいです。(真顔)

 主人公ルカの地位が一つ昇格したのには、
 裏でセナが糸を引いてますよ…ふふふ…←
 そしてエイト王子とセナには意外な接点があるので、
 そこも早く書きたいですね!





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