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こじれるとこうなる

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あらかじめ用意したコーヒー氷を削りまして──。
「僕たちも楽しめるコーヒーかき氷の完成ですっ」
五月晴れの名に相応しい、陽射しの眩しい昼日中。
シャトーを訪れた琥珀に、季節の先取りですがとエプロン姿の琲世が用意したのは特製のかき氷だった。
「琲世君すごい天才…っ!私、一度かき氷を食べてみたかったの…!」
陽射しを纏って輝く氷の山を前に、琥珀は同じくらいキラキラと瞳を輝かせた。
「そう言ってたのを思い出して用意してみたんですが……そんなに喜んでもらえるなんて」
嬉しいですと照れる琲世がかき氷機で氷を削り、不知がセットした器を動かして山の形を整える。
いつまでもかき氷を見つめてばかりの琥珀に、隣に座った瓜江が言った。
「琥珀さん、所詮氷なので、食べないとただのアイスコーヒーになりますよ(…かき氷ひとつで、よくこんなにはしゃげる…)」
「それはいやっ!!」
ちなみに瓜江が口に運ぶのはレモンのシロップをかけたかき氷で、
「ヌフフ、才子は禁断のレインボーに挑戦やで」
「禁断のっていうか…ドリンクバーで中学生がやるよね、全部入れ」
「おっ、才子いいなそれ!オレのもやってくれよ!」
「シラズくん…」
「ヌフ、待ってなシラギン。才子師匠がすぐに作ったる。その前に…」
ヘイ一丁!と才子は完成したかき氷を押し出した。
メロンとみぞれとイチゴのシロップのかかった、トリコロールかき氷。
「わっ、涼しさの欠片もない…」
「才子特製イタリアンスペシャルッ!むっちゃんを思って作りました」
「…ありがとう、才子ちゃん…」
テーブルを囲むそれぞれの前にカラフルなかき氷が並んでいる。
琲世が一番最後にコーヒーのかき氷を自分用に製作して席に着いた。
みんなの趣味がわかりますねと笑った。


「──っていうことが昼間にあったの」
台所で洗い物をする琥珀が丈に話す。
「でも、かき氷って美味しいのね。暑い日にぴったり」
丈に話した以外のことも思い出すのか、時折笑いを零しながら。
その様子を横目に、丈はアイスコーヒーのボトルを冷蔵庫から出してコップに注いだ。
この日は丈もまた、比較的早い時間に自宅に帰ってきた。
けれど先に帰っていると思っていた琥珀は、意外にも丈より少し早かっただけで。丈が玄関を開けたとき、慌ただしく夕食の支度に取りかかるところだった。
琥珀自身、琲世らの顔を見るくらいの気持ちで行ったため、シャトーにこれほど長居すると思っていなかったとも言っていた。
「…かき氷は、食べたことはなかったか」
「うん。かき氷機がないと氷削れないし。お祭りでも買ったことなかったし」
初体験しちゃった、と声を弾ませる。
それからも、丈兄は何味のかき氷が好き?とか。
氷にこだわったかき氷がどの店で食べられる、とか。
興味が湧いて、帰りの道すがらに色々調べたようで話は尽きない。
今日の体験もよほど嬉しかったのだろう。楽しげに語る琥珀の頬はずっと緩みっぱなしだ。
そんな琥珀を見ていて、丈の心にモヤっとしたものが込み上げてくる。
「でね、今では専門店とかもあるみたい。一年中かき氷のお店。…っていうことは冬でもお客さん来るのかな」
「琥珀」
「面白いね、…あ、ちょっと待って、洗い残しが──」
「琥珀」
「水に浸けておかないとダメかな…どう思う?」
「………」
「丈兄聞いてる──…えっ?」
丈はついにその顔に手を添えて振り向かせると、琥珀の唇にキスをした。
「んっ…!…ん、んぅっ…、」
琥珀の両手が濡れて動けないのを良いことに、するりと腰に腕も回し、背後から捕まえて琥珀を味わう。
啄むように何度も唇を重ねながら、時折舌を入れる。
けれども琥珀が応えようと唇を開くと、すぐに逃げる。
「…っ、…たけにっ、…ん…っ」
切なく開く琥珀の上唇を、丈は最後にぺろりと舐めて終わらせた。
琥珀は頬を赤らめると顔を前へ戻して俯いた。
「…丈兄…コーヒーの味がする…」
善いように食まれ、舐められて、琥珀にとっては欲求不満気味なキスだった。
しかし続きを求めるには照れがある。
「かき氷と、どっちが美味い?」
「……、知ってるくせに…」
ついでに琥珀の物足りなさも知っているくせに、丈は今度は、「いじわる」と拗ねる琥珀のうなじに唇を当てると、ゆっくり這わせた。
琥珀の耳にはあたたかな呼吸がかかり、ついでに耳を舐められた。琥珀の腰が鈍く疼く。
「ゃ…、んっ……た、丈にい…」
「………」
「ね、…もうちょっとしたら…洗いもの、終わるから…っ」
「…終わったら──どうなる?」
「お、終わっ、たら……っ、ん」
琥珀からは表情を見ることはできないが、どこか愉しげな丈の声が鼓膜を震わせる。
琥珀の腰に回された腕が緩む。
その代わりに、片方はスカートの中の太腿へ。
もう片方は服の中に滑り込んで琥珀の平らな腹をゆったりと撫でた。
「た、丈兄…っ、くすぐったい──…」
「くすぐったいだけか…?」
「…そんなこと、言えな、い……っ、んっ…」
太腿を撫でていた手がするりと這い上がり、疼く琥珀の中心へと近付く。
「ん、…だめ…、」
琥珀が逃げるように身動ぎをすれば、丈はその指をショーツの上から割れ目へ滑らせる。
小さな喘ぎと丈への制止を漏らす琥珀の唇を、丈は反対の手の指で、ふに、と押さえる。
琥珀は無意識に口を開く。
骨張った指が入り込み、琥珀はそれを唇で食んで舌を絡めた。
喰種の口に自分から指を入れるなんて、と、甘く痺れた頭で思う。
「んむ……」
自分の指にはない、しっかりとした骨。
口に含むのに丁度良い太さ。
「んっく、んぅ…」
やや曲げられた指を甘噛みしながら、皮膚から滲む丈の味を楽しむ。
このままでは喰べてしまいそうなほど、美味しい舐め心地だった。
琥珀は、ちゅ、ちゅ、と指を吸いながら別のことを考えなきゃと思考を反らす。
けれど思考の逃げた先には、中心を擦られて掻き混ぜられる快楽しかない。
そう、掻き混ぜられる──…
「たっ、丈にっ…やっ、まって──っ」
「…どうした」
事も無げに聞き返す丈は、琥珀の耳を優しく噛む。
ぞくぞくと背筋を昇る感覚に琥珀は上擦った悲鳴をあげ、思わず背が反る。
腰も突き出すかたちになり、いつの間にか琥珀の中に入り込んでいた丈の指がより奥を刺激する。
さらに一本指が増やされた。
「ぁっ、…な…中に、指が入って、…っ」
「そうだな」
「そ、そうだなってっ……ここじゃ、やっ──せめてベッド、行こ──、っ…」
とろとろに濡れきっている琥珀のそこを弄る丈の指。
琥珀が藻掻く度に暴かれる善い場所を、掠めてはくちゅくちゅと刺激する。…また一本。
「ここで気持ちよくしてやる──」
「ゃっ…ぁっ、やだぁっ、ん、んっ、…恥ずかし、ぃ…っ」
こんなところで、と嫌がる琥珀には構わず、丈は琥珀に舐められていた方の指を、琥珀の服の下から滑り込ませる。
中心を尖らせる乳房をやんわりと揉んだ。
琥珀の唾液で冷えた指先が硬くなった飾りを摘まむ。
琥珀の肌が粟立つ。同時に嬌声が上り、物欲しげに腰が揺れ、…また…。
「っ、…ぅん、っ──…」
「…琥珀、手を着け」
もういっそ蕩けてしまいそうな琥珀の下腹部に、背後からの熱が当たる。
力ない琥珀の手を、それまで胸を触っていた丈の手が絡み付いてシンクへ運ぶ。
「ね…、丈兄──、ほんとに…ここで……?」
「琥珀」
諌めるような、諭すような、丈の声が琥珀の鼓膜を伝って背筋も腰も痺れさせる。
悪いことをしているわけじゃないのに。
むしろ丈の方がしようとしているのに。
まるで琥珀の方こそが赦しを乞うように、大人しく息を潜めてその時を待つ。
背後で衣擦れの音がして、琥珀の濡れそぼった蜜壷へ、硬く勃ち上がった竿が押し付けられる。
ぬちぬちと花裂を擦って、つぷ、と挿し込まれる。
「ゃ……ぃっ──、っ…」
「っ、…、きつい、な…」
指で慣らしたとはいえ、久し振りに受け入れるそこは狭まっており、琥珀は痛みと圧迫感からぽろぽろと涙を零す。
下腹部から来る苦しさからは逃れられず、声を抑える代わりに、浅い呼吸を繰り返す。
「…琥珀…」
「…ふっ、──っ、…へい、き…」
「……、もう抜く」
丈に腹を支えられて、しかし琥珀は首を振る。
「ゃ、…やめ、ないで、丈兄っ……ちから、抜くから…」
琥珀はシンクに手を着いて、丈の手にリードされながら腰を上げるように突き出す。
短く繰り返される呼吸は痛みを逃すように切ない。
「ぁっ…っう……たけ、に…、…ぎゅって、して──」
「…っ、ああ、……っ」
丈は琥珀の身体を強く抱き締め、片方の手を下腹部に滑らせると、少しでも痛みを紛らわせるために指の腹で花芯を優しく弄った。
首筋にキスを落として自身の腰を押し進める。
「ぁんっ、あ、あ、あぁ、あっ──っ」
「…っふ、──琥珀っ…」
一度奥まで挿れてしまったらもう歯止めが利かない。
丈は「好きだ」と、今度こそ赦しの代わりであるように囁いて、何度も何度も、琥珀の奥深くを突いた。


事が終わって、琥珀は気だるい腰を支えきれず、ほとんど丈の腕に支えられている状態だった。
「…こんなところで…、するなんて……」
もたれ掛かるシンクも琥珀の体温が移ってぬるくなっている。
丈はというと、溜まっていたものを吐き出してやや気だるさもあったが、どこかすっきりした様子で琥珀を抱えている。
「…俺の指を咥える顔に興奮した」
「!! 」
真っ赤になった琥珀が、ばか、とか、そんな顔してない、とか、シンクに顔を伏せて拗ねた。
しかし同じように赤く染まった耳が髪の間から覗いている。
丈は琥珀を両腕で抱いて身体を密着させると、手のひらでへその下をゆっくり撫でた。
本当は、余所の話に夢中になる琥珀の目を自分に向けたかっただけなのだが、久し振りに琥珀を抱き締めたら止まらなくなってしまった。
…琥珀の顔にそそられたのも事実だが。
丈は言わないでおく。
琥珀の腹へと手を移し、なだらかな腰の括れを揉むように擦った。
そうして、撫でられる琥珀が、あれ…?と思ううちに丈の手が今度は胸へ上がってきた。
膨らみを包むように優しく手に納めて、耳許で「琥珀」と呼ぶ。
その意味を考えようとしなくとも、すでに身体全体で感じている。
「丈兄…ってば……、一回、したんだから、もう──」
「思い出したらまたしたくなった」
「お、思い出さないでっ、……っ、ならせめて、部屋に、やっ…、んっ、ぁ、あっ、あっ…!」
すべてを言う前に屹立した竿が埋め込まれた。
最奥を突く熱を、琥珀の意思とは関係なしに膣が強く締め付け包み込む。
「…っ、もう一度、したらな──」
…!?
熱く硬い竿が、琥珀の愛液を絡めて何回も何回も水音を立てて出し挿れされる。
いつになく激しい動きで揺さぶられて、堪えきれずに嬌声が上がる。
琥珀の頭のなかが真っ白に飛んだ。


160916
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