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御祝い☆anime.

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そろそろ行く時間だと、丈が椅子から立ち上がる。
見送りに来ていた琥珀も一緒に席を立った。
「行ってらっしゃい丈さんっ。あと、頑張ってね」
「頑張る…ほどの出番もないぞ」
「そうなの?」
丈はこくりと頷く。
「だから…夜食だけ頼んでいいか」
丈が言うと、今度は琥珀がにこにこと頷いた。
すると傍の椅子に同じく座っていた倉元が"夜食"の言葉に反応する。
「夜食かぁー。やっぱり手料理だよね?琥珀ちゃんの」
この時間からの仕事となると、終わった頃にはほどよく空腹だろう。
「はい。でもお茶漬けとか豚汁とか、それくらいですよ?」
「あったかい料理が待ってるのがさ、何より嬉しいよね?」
琥珀の返事に、さらに合わせるように倉元は返す。
良ければ用意できますがという琥珀の戸惑いにこにこ。
夜食ゲットのチャンスがあと一押しな倉元のにこにこ。
「えっと…丈さん?」
「タケさんっ!」
「………」
倉元と琥珀のにこにこに呆れながら、「…泊まる場所は知らないぞ」と、丈がぼそっと了承した。
ぐっとガッツポーズする倉元。
の、向こうから今度はハイルが顔を出した。
「ハイハーイ。私も参加希望〜」
「あっ、ハイルちゃんも来てたの?」
「有馬さんについてきちゃった。琥珀、ゴハン作るんしょ?私も食べたいー」
もうお腹減りましたぁーと手を挙げる。
やって来た有馬と宇井への宣言も兼ねて。
「有馬さんの活躍みたら、今日は琥珀のところにお泊まりします。ので、よろしくお願いします〜」
「何がよろしくなのかわからない」
「"お庭"に、よろしくです。こーり先輩」
「普通に知らないからな?"庭"発の君らがどこに住んでるとか。…どうなんですか有馬さん」
「さあ。"庭"の代表番号にでも連絡しておいたら?」
「有馬さん…。自分ちのことでしょうが」
すい、と有馬の視線がそっぽを向く。
言いたくないことは洩らさないのが有馬スタンスだ。
やり取りを見ていた倉元が、こーゆー光景見たことあるなーと既視感を覚える。
「宇井さんも大変っすね。教えてくれない上司とか」
「本当に…。"庭じゃない仲間"だったタケさんも、最近は班に付きっきりで全然飲みに行ってくれないし」
「飲みましょう、宇井さん。今日は俺もとことん付き合いますんでっ」
「伊東くん…!」
倉元と宇井がしっと手を組む。
二人から飛んでくる棘がちくちくと丈に刺さる。
完全に有馬の巻き添えを食らった形だ。しかしそれを有馬に目で訴えるも、
「巻き添え?そうだった?」
「(…鉄面皮)」
有馬に棘は刺さらなかったらしい。
「琥珀、ゴハン何作るん?」
「ゴハン…というよりお夜食だから。軽めだよ?」
「えー。じゃあ、お野菜?お鍋?」
「ハイル…食べる気満々じゃないか…」
「そのぶん明日動くので太りません〜」
琥珀の後ろから可愛いくも憎らしく答えるハイルに宇井の目が据わる。
抑えるように倉元が間に入る。
「まぁまぁ。帰りに酒買ってきましょーよ。宇井さんは何飲むんです?」
「…黒ビール。有馬さんはどうされますか?」
「何でもいい。タケ、後で手土産買うから帰りまでに考えといて」
「琥珀、有馬さんの出番みたら手伝い行くからっ」
あとでね〜とハイルが手を振る。
琥珀もまた皆の背中を見送りながら小さく奮起した。
「んん。お夜食の予定だったんだけど。材料いっぱい買って帰らなきゃっ。…丈さんっ」
きりっと丈を見上げて宣言をする。
「私、頑張りますっ。丈さんも頑張ってねっ」
「…。程々にな」
琥珀は丈を見送りに来ていたはずなのだが、ぱたぱたと小走りで帰っていく。
途中で夜間営業のスーパーにでも立ち寄るのだろう。
趣旨が変わってしまったことにも琥珀は気づいていないなと丈は思った。
ただ。
「(…結局、何人が家にひしめくことになるんだ…)」
人数を数えながら丈は現場に足を向けた。


アニメ化おめでとうございますー
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