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yu-ba.

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通りかかった時に、それは聞こえました。
「──ゆば!」
一体どんな話の流れでしょう。向かい合う丈さんと四方さんの姿があります。
(あんな通路に立っていないで別の場所で落ち着いて話せばいいのに…とも思いましたが、こっちに来ようとした士皇君に「二人とも邪魔だよ」と押しやられる姿が可愛くて、私はひたすらに見ている係りです)
「琥珀、お待たせ。通路が混んでてさー」
「うん。待ってないよ。ちょっと和んでたところ」
「えっ、どの辺で?」
ずれてしまいましたが湯葉の話です。
どうやら四方さんが"湯葉"と口にしたようでした。
湯葉といえば和食のお品。
和食といえば丈さんのごはん…。
「士皇君。今日の晩ごはんに、湯葉を添えようと思うの」
「え?いいけど何でゆば?」
思い立った私は予定を変更して地上へ向かうことにしました。
「でもさ、琥珀。ゆばってどうやって作るの?」
「!」
確かに、考えてみたらお外で出されることはあっても作ったことはありません。湯葉。
「月山のところなら調べられるんじゃない?ネット繋がってるし」
それは名案です。ありがとうと私がお礼を言うと、士皇君は誇らしげに胸を張りました。
「そういうことでパソコンを使わせてください月山君」
「ようこそレディ。どういう事かはさっぱり分からないが、助力が必要であるなら僕は惜しむことなどしないさ」
「前髪だけじゃなく台詞も長い」
「気持ちを表すには文字数を惜しんではいけないよ」
「えっと……クック…ポッド、と──…」
「hmm. 料理レシピの検索サイトだね?和食かな?洋食かな?フランス料理なら僕も多少アドヴァイスができるんだが」
「月山君、すこしお静かにお願いできますか?」
「おっと、これは手厳しい」
「…前から思ってたけど、タケさんが絡むと琥珀は周り見ないよね」
湯葉の材料とレシピをメモに納めた私(と士皇君)。
回り道をしましたが、お財布を手に、今から地上へ向かおうと思います。
「膜つくって剥がすだけだったね」
士皇君は湯葉の地味な作り方にがっかりの様子です。
けれど甘く見てはなりません。
料理は素材も味付けも大切なのです。
「さあ士皇君、新鮮な食材を狩りに行きましょう──」
「買いにね。あと真剣すぎて赫眼でてるよ」
「いざ──っ」
「琥珀、士皇、出かけるのか」
その時まさに、私の足を地に縫い止めたのは湯葉を喰らわせるべき標的・平子丈──
「琥珀、戦闘準備は解いていいと思う」
「え?…あっ、つい…」
「出かけるのは構わないが……。買い物か、琥珀」
「丈さん…。えっと…さっき湯葉って聞こえたから、食べたいのかなって…思って…」
「………」
「それで琥珀、作り方も調べたんだよ。タケさんと四方おじが話してたでしょ。ゆばとか…ユダとか………、あれっ?」
何かに気がついたような士皇君。
丈さんは、ぷいっと顔を逸らしました。 ???

「タケさんのせいで琥珀が勘違いしちゃったじゃん」
「………」
「勘違いってなに?丈さん」
「…大人の事情だ」
「もー。タケさんも月山くらい派手に喋ったら勘違いされないのにさー」
「月山さんみたいな丈さん……私はちょっと…」
「もういいだろう。お陰で湯葉が食べられる。士皇」
「はーい。夕乍と理界、呼んでこよっと」


171020
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