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喰種式婚姻証明

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カセットコンロにお鍋をかけてパスタを茹でていると、もの凄い勢いでカネキ君が走ってきました。まるで陸上選手のような完璧なフォームです。
「琥珀さん、アキラさんと友達なんですよね、いつでも会えるんですよね──!?」
「えっ?うん、そうだけど。連絡も…いちおう取れるけど。(それよりもカネキ君の目つきが怖い…)」
私の答えにカネキ君は、よしッ!と拳を握ると、ついてきてくださいッ!と腕を引きました。
引きずられるように走りはじめてすぐ、士皇君とすれ違ったので、
「あと2分だからっ。ソースかけて食べてねっ──」
と伝えると士皇君は、定式幕の柄のパッケージをこちらに掲げて、キリッと力強く頷きます。
士皇君あのね。それはパスタソースじゃなくて永谷園のお茶漬けの素だと思うの。(丈さんが気づいてくれると良いんだけど…)

地上に出てすぐに、私は携帯の電話帳を開きました。
通話を押してコールが一回、二回──…「もしもし?琥珀、大丈夫なのか?」と。
久し振りに聞くアキラちゃんの声。でも電話が通じたらカネキ君の目つきがいよいよ危なくなってきたので、すぐに交代をしました。
どうやらカネキ君は亜門さんに用事があるみたいです。
一言置きに「亜門さんを」と病的に連呼をしています。(アキラちゃんと会えるなら、亜門さんとのお話も聞きたいな)

小一時間くらい時間を潰す間、カネキ君はうろうろ、ウロウロ、と見事な徘徊をして。
そうしてやって来たアキラちゃん──には目もくれず、亜門さんの両肩を掴むと、カネキ君は声も高らかに言いました。僕と離婚してください──!
うん。
ん?
「で?離婚を迫られるということは、ナニがあった、と言うことなのだな。亜門鋼太朗」
「なッ──!?待てアキラ!一体何の話だ眼帯ッ!?」
アキラちゃんを見て、カネキ君を見て、亜門さんの血圧が上がります。
でもカネキ君のテンションはもっと高いです。
「傷は!?それさえ無ければセーフな気がするんだッ!首すじ?それとも肩?ああもうどっちでもいいッ!亜門さん、脱いでくださいッ!!!」
ビリビリビリ──。
布の裂ける音が往来に響き、近くを通りかかった主婦の方々が「痴話喧嘩かしら?」と、どこか目をきらきらさせて窺っています。
まさかそんな、ビジュアル系な細身の青年と、鍛え上げた半裸を晒す美丈夫が、世間を賑わす喰種の王様と半喰種の元捜査官だなんて誰も思いません。
「ぐっ!やめろ、服を引っ張るなッ!」
チラリと一瞥したアキラちゃんは、早くも他人のふりをはじめました。
「琥珀。久し振りに会ったのだから話を聞かせてくれ。なに、アレは放っておけ。お前は知らなくていい爛れた過去だ」
「えっ?うん…?ただれた?」
「アキラ!誤解を招く言い回しをするんじゃない!」
「僕のつけた傷ッ!傷はッ…!?早く答えてください亜門さんッ!!!」
最終的に暴走したカネキ君は亜門さんのヘッドロックでダウンすることとなり、私がカネキ君を背負って地下へと帰りました。
本当はもう少しアキラちゃんとお話をしたかったのだけれど。それはまた別の機会に。
ところで…、

「琥珀、パスタ美味しかったよー」
カネキ君を自室に置いて、騒ぎから解放された私が戻ると、ちょうど士皇君と丈さんが食事の後片付けをしているところでした。
「士皇君…あれね、お茶漬けの素だったと思うんだけど」
しょっぱくなかった?
私が訊くと丈さんが、道理で、と手を止めました。
「茶漬けが食べたくなった」
ああ、やっぱり…。
明日はお米を炊こうと思います。


170719
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