×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



lollipop.

.
甘い予感はしていたのだ──。
「んっ……」
夜も更けて、リビングは明かりを落として静まり返っている。
灯りが漏れるのはこの寝室だけ。
琥珀はベッドに身を預けていた。
両の手首を縫い止めるように押さえられて、手首には熱を、背中にはシーツの冷たさを感じる。
露になった胸元を生ぬるい舌が伝う。
「(こんな風に…しなくても……逃げないのに…)」
琥珀は自身に覆い被さる丈のつむじを見る。
丈は先日の休みに触れられなかった分と言わんばかりに、一切を纏わない琥珀の肌の、至るところに口づけを降らせた。
乳房のやわらかい膨らみを楽しむように鼻を押しつけながら、赤い飾りに到達する。
つんと尖ったそれを吸われて、琥珀の腰が浮いた。
「あっ…」
甘い痺れが背中を抜けて腰へとはしる。
無意識に身を捩れば、手首を掴む手に力が込められ、更に強く飾りを責められた。
舌でねっとりと押し潰され、求めるままに食まれた琥珀は思わず高い声を漏らす。
丈の視線がちらりと見て、戻った。
答えの代わりに、丈は琥珀の首筋に鼻先を寄せて優しく舐める。
「…ひっ…、ぅ……丈兄…っ……」
「……ん」
「…も、もう…手、はなし、て……っ」
琥珀は身体の中心の、もどかしい疼きに眉根を寄せた。
今に至るまで一枚一枚と服を剥がれながら、ゆったりと、時おり強くまさぐられ、深く深く口づけを交わした。
愛しい人にそれほどをされて、身体が熱を孕まないわけがない。
「私も、丈兄を……ぎゅってしたい…」
擬似的に琥珀の其処に押し付けられる丈の雄だって、もうとっくに硬く熱い。
どちらも繋がる準備はできている。
それなのに丈は大切な場所に挿れてくれない。
煌々と明るい室内で、はしたなく濡れきった其処をこれから丈に開かれる──想像するだけで、琥珀はもう泣いてしまいそうだ。
だからこのまま、身体を密着させたまま繋がりたかった。
思いが通じたのか、丈は掴んでいた手を離す。
ふっくらとした琥珀の頬に触れた。
琥珀の身体の膨らみや括れを、丈の指がなぞるように滑って下りる。
へそを過ぎて下腹部を撫で、湿る茂みへと指先を挿し込む。
くち、と水音が漏れた。
丈は琥珀の耳を優しく噛む。
「……欲しいか…?」
「ぁっ、……んっ…んっ」
蜜を絡めた指先が弄り回す秘所も 、ざわりと温い舌が侵入する耳も、その奥の鼓膜を震動させる吐息混じりの低い声も、すべてが琥珀の中心を疼かせた。
けれど達するにはまだ足りない快楽の手触り。意識が蕩けてしまいそうだった。
琥珀は赤く染まった顔で唇を震わせ、小さく頷いた。
了承の意味の口づけが額にされる。
一時期の優しい心地に琥珀は瞳を閉じた。
トクリ、トクリと自身の鼓動を感じ、太腿に丈の手がかけられる。
それは、くすぐったいような、身体の疼きを促すような不安の瞬間だった。
そんな時こそ、琥珀は丈にしがみついていたかった。
けれど琥珀が瞳を開いた時には、覆い被さっていたはずの丈は、足の方へと身をずらしていた。
琥珀の太腿を指でなぞりながら開かせる。
「…丈兄…?」
そして身を屈め、内腿に唇で触れた。
「え──…えっ、な……なに──」
あまりにも其処に近い場所に顔を寄せられ琥珀は慌てた。
手でするのではなく、その場所を愛撫されること。
そういう…行為もあることは知ってはいたが、されたことなんて一度もなかった。
琥珀が驚きで固まっていると、ぬるり、と生暖かい何かが擦れた。
とろとろに濡れる割れ目を丈の舌が舐めたのだ。
「ふぁっ、…ん、っ──…!」
尖らせた丈の舌先が、ぷっくりと腫れて膨らんだ花芯をちろちろと嬲る。
とてつもない羞恥と感じたことの無い刺激に琥珀の腰が悶える。
丈の頭を離させようと手を伸ばすが、力が入らずに髪を撫でて落ちた。
「そっ、そんなところだめ──っきゃ…あっ、あっ」
丈は琥珀の脚を押さえながら、なおも味わう。
愛液の溢れる其処に舌を挿し込み押し付けて、存分に舐めた後に、今度は花芯を口に含む。
「…やっ、や、やだぁ…たけにっ………や、ああんっ…!」
逃げようと藻掻く腰をしっかりと捕らえられ、琥珀は達した。
収縮して、とろりと溢れる感覚に震える。
また丈の舌が掬う。
「あんっ、…んんっ、……や、ぁ……」
ひくひくと其処を中心に広がる余韻に、なすすべもなく浅い呼吸を繰り返す。
ようやく満足したのか丈が身を起こした。
喘ぐ最中に琥珀が溢した口許の唾液も、指で救ってペロリと舐める。
「お前を、隅々まで食べたような気分だ」
「〜っ!」
琥珀は真っ赤になり、思わず両手で顔を隠した。
自身の一番敏感で感じる箇所を丈の舌が這ったのだ。その唇で吸われたのだ。
あげく最後には溢れたものまで舐め取られた。
「うぅ、…っ……はずかし……もぅ………」
「………。こうされるのは嫌か」
やや間を置いて丈の声が降ってきた。
その声色は少し自信が無さそうに聞こえて、琥珀は指の隙間から丈を窺う。
「…やだ…って、いうか……恥ずかしい…の………。それに…びっくり、したし…」
手でされるのだって十分に感じてしまうし、自分ではないような高い声が漏れるというのに。
それを更にあんな風に愛され、喘いで。まるでいけないコトをしたような気持ちになる。
顔を隠す琥珀の手に、丈の手が重なる。
「お前の全部が欲しかった」
思い出して、琥珀の頬がまた火照った。
「…お前が嫌ならもうしない──」
丈の手は琥珀の手を退かそうとするでもなく、爪の形をなぞってみたり、指の間をするりと撫でて絡めてみたり。
その様子はまるで、強く手を引かれた後で優しく抱き寄せられるような、与えられる焦燥感と安堵の心地だ。
琥珀の中には、こんなにすぐに負けではだめ、と頑張る自分もいた。
けれど、甘いお菓子につられる子供のように、いとも簡単に手懐けられてしまった。
大好きなお菓子は丈。我慢のできない子供は琥珀。
琥珀は顔を隠す手を退けた。
恥ずかしい思いが残っているために、見下ろす丈とは目を合わせない。
口づけもしないで丈の頭を抱き寄せる。
せめてこの真っ赤な顔だけはもう見せないという、最後の意地だった。
「……た、たまに…だったら……してもいい…よ」
丈が動こうとしたので琥珀は小さく抵抗する。
抱き締めたまま続ける。
「でもっ、………電気は…暗くしてくれなきゃ…いや」
「………。努力する」
「や、約束っ」
「………」
「そこは譲れません…!」
琥珀の肩口に頭を押さえられて、もぞもぞと丈が、わかったと答える。
息と声が微弱に肌をくすぐり、琥珀も笑い声を零した。
ちゅ、と丈の唇が優しく吸う。
「琥珀」
「ん…?」
「いつまでこの体勢でいればいい?」
「きょ、今日はもう…顔見ちゃだめ……。ほっぺた、熱いの…。顔もぜったい赤いから…」
「続きもしたい」
「……しても、いいけど…」
「………」
「………」
「泣いて縋る顔が堪らなく可愛かったんだが」
「!!…もっ、や………っ、言わなくていいのっ…!」
涙目の琥珀はしばらく丈を掴まえていた。
けれど腰の奥を強く揺すられるうちに、するりと手から逃げられた。
最後は丈に、甘く甘く苛められた。


170704
[ 81/225 ]
[もどる]