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彼女の元気がないときは

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朝起きて、洗面所へ向かおうと居間のドアを開ける。
テーブルの上には朝食の準備が整っていた。
しかし琥珀の姿が見当たらない。
丈が訝しく思った時、ソファーから呻き声…かもしれない挨拶が耳に届いた。
「おは…ぅ、よう、…たけにー……」
目を向ければ、スカートの布地が山を作り、その端から足先が覗いている。
琥珀はソファーで丸まっていた。
「どうした。調子が悪いのか……」
体調不良=風邪だろうかと丈の頭を過る。
傍に膝をついておでこに触れると、琥珀は困ったように身動ぎをした。
「あ……違うの、えと………いつものだから…平気…」
「いつもの?」
「うん」
「………………。そうか」
「…ん…」
そう言われると男の丈には何も言えない。
女性の身体に毎月訪れるらしい、それ。
どう気遣ったらいいのか今度は丈が困っていると、琥珀に「朝ごはんは冷蔵庫にいれてあるから」と先を越された。
こういう際に男は役に立たないなと思う。
朝食を食べ終わってソファーを見ると、琥珀は目を閉じていた。
眉間にしわを寄せ、足先がたまにソファーを叩く。
寝てはいないようだ。
…痛いらしい。
「平気か」
「…。あっためるといいって…聞いたから、温かくしてるんだけど……」
あんまり効かなくて、と笑う。
ごろごろ、ゆらゆらとソファーの上でおなかを押さえて身体を揺すった。
「…どこが痛む?」
「え?うーん……腰とか…おなかとか……」
「………」
丈は琥珀とソファーの間にぐいっと身体を割り込ませた。
「きゃ……わっ、おっ、落ちちゃう…っ! 」
慌てて逃げようとする琥珀に「落とさない」と答えて、その身体に腕を回し、ぴったりとくっついて共に横になる。
「あたたまったか?」
「あ、あついくらい。……でも…痛みも、紛れるかも」
「そうか」
「うん…」
琥珀の表情は見えないが、丈の腕ごと身体を縮こまらせたので、丈は好都合とばかりに更にしっかりと抱き締めた。
「痛いのはこの辺か?」
手を宛がうと、くすぐったいと身を捩る。
「ふふっ、ううん。…もっと下のほう」
琥珀の手が丈の手を取って、下腹部をやんわりと押す。
「…押して平気なのか」
「もうね、そうしたいくらい、痛いの」
「さっきもゴロゴロしてたな」
「うん。のたうっちゃう」
痛いんだもん、とまた足先をぱたぱたさせて悶えた。
これならいっそ、と丈は思う。
「肌に…直接触りたい」
「へっ?」
丈の言葉に琥珀は、ええと、とか、うー、と戸惑っていたが、最後には、うん。と答えた。
服の裾を少し捲って、反対の手で丈の手を取る。
丈の指先が琥珀の肌に導かれ、次に手のひら全体が、ぺたりとくっつく。
スカートのウエストの下に潜り込み、へその窪みがある。
そこから少し下へ。
小指と薬指がショーツに重なって動きが止まった。
「このへんがね、痛くて」
「やわらかい」
「それは…私のお肉だもん」
丈は手のひらで、しばらくやわやわと琥珀の腹部を揉んだ。
琥珀の呼吸を感じながら、優しくそこをさする。
本当はもっとたくさん触りたいが、琥珀が元気になるまでの我慢だ。
強く抱き締めたり、口づけたりは。
「早く…痛みが終わるといいな」
「うん…」


170613
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